「OOS、見えていなかった根本原因」− FDA査察から見た目のつけどころとチェックポイント
今回取り上げたのは、2026年3月30日にFDAがインドのIntas Pharmaceuticals Limitedに対して発出したWarning Letter(MARCS-CMS 721151)です。対象は経口固形製剤の製造施設です。原文はFDAのウェブサイト(https://www.fda.gov/inspections-compliance-enforcement-and-criminal-investigations/warning-letters/intas-pharmaceuticals-limited-721151-03302026)で公開されています。(ブラウザの翻訳機能で、日本語で読むことができます。)
今日注目したのは、Observation 1の内容です。指摘は、規格外(OOS)調査が不十分(21 CFR 211.192)だったことです。2023年以降、錠剤の含量(assay)で繰り返しOOSが確認され、製造工程の変更や分析試料の調製方法の見直しなど、複数のCAPAを実施しました。それでもOOSは発生し続けました。
安定性試験で確認されたOOS結果の調査では、根本原因としてあがったのは「product behavior(製品の挙動)」という説明でした。FDAはこれを「科学的に根拠のある説明ではない」と否定しています。分析方法を変えると結果が変わったにもかかわらず、元の方法(original method)のバリデーションをさかのぼって評価しなかった点も指摘されています。
GMP省令もPIC/S GMPも、OOS調査をして根本原因を求めている点は変わりません。このWarning Letterで注目したいのは、FDAの視点です。「なぜ当初のバリデーションでこの問題が検出されなかったのか?」「市場クレームや有害事象との相関はないか?」FDAはこの査察で、患者の安全まで視野を広げた評価を求めています。「今回は製品特性によるものだ」という回答書の説明は、FDAには通じないのです。
ここで、査察官の思考プロセスを推論してみました。
「OOSが繰り返されている」→「CAPAをしてもなぜ繰り返すのか」→「製品の挙動(product behavior)だけでは、根本原因の説明になっていない」→「分析方法を変えたら結果が変わった」「試験法を疑うべき」→「バリデーションまでさかのぼる必要がある」→「個別のCAPAではなく、調査システム全体が機能していないのでは?」
FDAがこのWarning Letterの回答として求めた内容の重さに注目してください。有効期間内の「全バッチ」の遡及的影響評価、「全製品プロセス」(each drug product process)の変動要因の包括的見直し、逸脱・OOS調査システム全体の独立した評価(independent assessment)と是正計画、そして独立した第三者機関(independent third-party)によるCAPAプログラムの評価 −これらを並行して進めることになります。
数ヶ月単位の工数と相当なコストが現実に発生すると思われます。事前に査察対応の準備(調査の仕組みの見直し)をしていれば、ここまでの時間的・経済的コストは生じないかもしれません。「指摘されてから対応すればいい」「軽微だからワンチャンスを狙える」「時間がないからしょうがない」という考えが、いかに大きなリスクを内包しているか… このFDAの要求リストは無言で物語っているように思えます。
今回の指摘の本質は「OOSが出た」ことではありません。「表面的なCAPAを重ねながら、調査システムの構造的な問題に向き合えなかった」ことです。運用でカバーし続けても、仕組みそのものが変わらなければ、OOSは形を変えて繰り返されます。FDAが見るのは個々の結果ではなく、それを生み出した品質システムの設計です。
「OOS調査はきちんとやっている」と感じている現場は多いかもしれません。ただ今回のケースが問いかけているのは、その調査が本当に根本原因まで届いているかどうか、ではないでしょうか。
*対象:Warning Letter MARCS-CMS 721151(Intas Pharmaceuticals Limited, 2026年3月30日)Observation 1(21 CFR 211.192)*
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