「装置の洗浄・保守不良」‐FDA査察から見る品質監督機能と品質システムの欠陥‐
2026年3月11日付で、インドの原薬メーカー Flowchem Pharma Private Limited にFDA Warning Letter 発出されました。指摘された内容は、①洗浄・保守の欠陥(洗浄不良装置の洗浄済み表示)、②原料や中間体の保管の欠陥(屋外、屋外状態での保管)、③不純物プロファイルと試験法の欠陥(未知不純物の評価)、④原料の受入試験の欠陥(供給業者のCOAの未評価)です。その背景にある問題は、品質部門の監督機能と品質システム全体にわたる弱さがあります。
今回は、①の設備洗浄と維持管理に焦点を当てて考察することにします。
warning letterのURL:https://www.fda.gov/inspections-compliance-enforcement-and-criminal-investigations/warning-letters/flowchem-pharma-private-limited-720719-03112026
【GMP省令・PIC/S GMPの立場から考える】
GMP省令もPIC/S GMPも基本原則は ”always cleaned”ということで、FDAとの違いはありません。即ち、この状態は、三極ともに重大な指摘事項に値する観察事項となります。ここでは詳しく書きませんが、「装置のキズ」は「装置の洗浄」と1セットで洗浄・メンテナンスです。Warning Letter を読んで確認しておくと良いと思います。
【頻繁に発生する事象は現場で軽視されやすい】
洗ったはずだけど、後でみたら残留物や液体が残っていたということは、よく観察されます。どうするかといえば、洗い直して使用するわけです。しかし、これは厳密に言えば、設備の状態確認、清掃後の適格性の判定、保守、現場責任者の監督などが、総合的に機能していない状況を示しています。
ここで注意しなければならないのは、FDAは当該装置(非専用装置)に存在した残留物や液体が何であったのか調べていないことを問題視していることです(Furthermore, you did not perform an assessment of residues and liquids in process equipment that you had identified as clean.)。問題の明確化ができていなければ、調査も是正措置もできません。しかし、この会社は、"you state that you have cleaned equipment and have updated cleaning and maintenance procedures"と回答しているのです。
【査察官のAPI製造現場でのアプローチ】
FDA査察官がこの会社でまず見るのは、洗浄済みと表示された状態が、「実際の状態と一致」しているかです。しかし、結果は製品接触面に正体不明の残留物、液体が残っていて、表示と一致していません。
査察官は、現場でまず現状と表示の整合性を見ます。すなわち、装置の状態識別に「洗浄済み」「使用可」と書かれていれば、次に実物の内部が乾燥していて、残留物がなく、損傷がなく、保護された状態かを見ます。設備の内面、マンホール周辺、バルブ、ホース接続部、攪拌翼、ガスケット、移送容器の内側、仮置き容器、清掃用具の置き方などは、典型的な観察ポイントです。表示していても、実物がそれを裏づけていなければ、査察官は「この工場の状態表示は信頼できない」と判断するでしょう。今回のwarning letter の問題は、「表示と実態の不一致」でした。
【Warning Letterと判断した背景】
FDAがWarning Letterという規制措置を選択した理由は、単に設備の洗浄不足という一手順の欠陥ではなく、システムベースで問題を見たからだと思われます。実際には、設備の状態確認、使用前点検、逸脱の検出、品質部門の監督が一体として機能していないと判断しています。
◇◇~~~~~~2026年度公開セミナーのご案内~~~~~~◇◇
◆国際レベルGMP監査員養成講座の案内書
◆グローバルGMP講座の案内書

