受託者が出荷判定してはいけない根拠

この数年のトレンドですが、外部委託業者(供給者も)の管理はFDA査察の焦点の一つになっています。FDAは、受託業者が市場に向けて出荷判定することを許していません。その根拠文書はどこにあるのでしょうか。

出荷判定できないことは、条文に書かれています。

<原文>21CFR211.22(a)
“211.22(a) …The quality control unit shall be responsible for approving or rejecting drug products manufactured, processed, packed, or held under contract by another company."

すなわち直接要件ですので、絶対守らなければなりません。

この条文の草案が出た時に、質問した人がいます。「もっとはっきりしてよ」みたいな感じですかね。それを、当時のFDA長官が説明しています。1978年のGMP前文コメント#97です。この文章が、根拠になるように思います。

受託業者が製造している間も、この製品の所有者は委託者です。すなわち、所有物の責任は委託者にあるわけです。受託者は、製造というサービスを提供しているに過ぎません。

<原文>Preamble #97
“…This paragraph clearly says that the quality control unit of a contracting firm must approve or reject drug products produced by contractors. The commissioner believes this is proper because, in the circumstances described, the contractor does not own the goods, but merely performs a service for the contracting firm. The responsibility to approve release of a drug product for distribution must rest with the owner of the drug product."

この根拠を受け入れるには、「医薬品の所有者が自社の製品の品質に対して責任を持つべきである」ということが前提になります。

この前提が納得できないと、コメント#97は根拠として通用しません。もし、組織内に納得できない人がいたら、私たちはどのように説明したらいいのでしょうか。

「これ納得できない人いるの?」と、普通は思いますね。それって、落とし穴かも…

私たちは「それって、当たり前でしょ」と言って片付けてしまうことが、結構あるかもしれません。「所有者が責任を持つのは当たり前でしょ」とか「改ざんしちゃいけないのは当たり前でしょ」と。この説明のしかたで納得してもらえれば、GMPの解釈で議論は生じないかな。後は納得したことを実行に移してもらうだけです。「実行するのは当たり前でしょ」

この「当たり前」という言葉、理由を説明していませんね。

質問に答えていないことって、よくありますよね。組織内の納得できない人たちに、どのようにアプローチしたらいいか、ちょっと考えてみたいですね。

ちなみに、受託者の品質部門ができるのは、委託者に出荷(所有物を加工して返却)する適否の判定です。これは個人的な意見ですが、受託者の行なったサービスに対する責任が受託者にあるからだと思います。「なぜ責任があるんですか?」「責任があるに決まってるじゃないですか。」「…??。」