これからのFDAについて

「速く・見える化・AI化」へ変貌しようとしているFDAですが、現場のGMPはどう変わるのでしょうか?

2025年12月15日のPharmaceutical Technologyの記事(脚注のURL参照)は、2025年のFDAが「審査と規制運用のやり方」を変え始めていることを示めしています。その背景には、医薬品(CDER)とバイオ製品(CBER)のトップ人事が動きがあります。CDER、CBERの両トップのもとで、FDAは1)審査の短縮、2)判断根拠の公開(透明化)、3)AIの実装を同時に進めています。

まず、Commissioner’s National Priority Voucher(CNPV)というパイロットです。従来10〜12か月が一般的だった最終審査を、1〜2か月へ超短縮する枠組みで、"tumor board"型(複数の専門家が同じテーブルで議論して一気に結論を出す会議形式)のチーム議論で素早く結論を出すと説明しています。

ただし対象は何でも良いわけではなく、米国の健康の危機・不足しているニーズ・革新的治療に加えて、「国内製造の強化」が要件として明記されているのが特徴です。私たちにとっては、この国内製造強化が注目点になります。

次に、透明化です。FDAはComplete Response Letter(CRL)を、スポンサーに発行した後すみやかに公開する方針を進めています。 これは「何が足りず、どこで止まったか」が業界全体に早めに共有されるため学習効果が大きい一方、企業にとっては「弱点が世の中に出る」時代になることを示唆しています。

そしてAIです。FDAは、職員が複数ステップの業務(審査やコンプライアンス対応を含む)を支援できる"agentic AI"を展開し、内部文書に安全にアクセスしてレビューを加速する生成AIツール「Elsa」も導入したと述べています。

さて、これらの動きはGMPにどんな影響をもたらすのか?

まとめてみると、以下のような影響が考えられるように思います。

・申請の提出点で完全なCMCにしておく必要がある
・米国内での設備の構築・技術移転・査察準備を審査スピードに合わせて行う必要がある
・PreCheck Programから、工場の準備も完了している(品質システムが整っている)ことが期待される
・審査で指摘されたものは公開されるので、失敗しないためには審査で指摘されないだけの完成形にする必要があり、品質部門の十分かつ適切なレビューが期待される
・AIにより、提出データの欠陥や矛盾が見つかりやすくなるため、データの定義、用語の定義、バージョン管理、監査証跡、変更理由などの説明を事前に整理する必要がある

当然やることは同じなのですが、その時期や実装の深さが大きく変わる、または影響することになると思います。

私たちが行うことは、昔から言われている"Right First Time"です。CGMPの正しい解釈と実践への取り組みが、ますます望まれる時代になりそうですね。