GMPを勉強しよう-67-MHRA データインテグリティのガイダンス 2018年(4.3)

データの生成は、以下の4種類があげられています。

(i)紙への記録。マニュアルの観察や活動を紙ベースで記録する方法。
(ii)電子的な記録。単純な機械から高度な設定ができる複雑なコンピュータシステムまで、幅広い機器を使用して記録する方法。
(iii)ハイブリッドの記録。紙ベースの記録と電子記録で構成するオリジナルの記録を構成する方法。
(iv)その他の記録。写真、画像、クロマトグラフィープレートなどによる方法。

 

紙の記録について

マニュアルで紙にデータが書かれた場合で、データインテグリティのリスクアセスメントや他の要件によって必要とみなされたら、独立した検証(原文:verification)が必要であるとしています。このように、リスクが低減されるような監督的処置を検討するように求めています。

監督的処置で一般的に行われているのは、立会い、検算、レビューなどのダブルチェックですね。

電子の記録について

電子記録の場合のデータインテグリティのリスクは、機器やシステムによって異なります。データを生成または使用するシステムの設定、データ転送中の操作などの可能性によると言っています。

データインテグリティのリスク低減化のために、適切に構成された技術の使用を検討べきであるとも言っています。

構成可能なソフトウェアではなく、電子データを維持しない単純な電子システムは、校正だけでよいとのことです。複雑なシステムは「目的にあったバリデーション」を求めています。個々で、単純なシステムとして、pHメーター、天秤、温度計を例示しています。

このバリデーションの取り組みは、システムの複雑性とリスクが上がるにしたがって増加します。この複雑性とリスクは、ソフトウェアの機能、構成(configuration)、ユーザーの介入、データライフサイクルを考慮して決定します。ここで、複雑性が低いとみられるシステムを大目に見て、見過ごすことのないようにすることが重要だと注意しています。それは、データの操作や求める結果が出るまで試験を繰り返すことが可能なシステムがあるからです。その例として、ECGマシン、FTIR、UVなどをあげています。これらのシステムは、ユーザーが構成可能なアウトプットを出せるスタンドアロンのシステムです。

ハイブリッドの記録について

ハイブリッドシステムを使用する場合は、データセット全体の構成を明確に文書化しなさいと言っています。そして、データセットの記録を全てレビューして保持する必要があります。

(“..)φ;データインテグリティの文献には、「データセット」という言葉がよく出てきます。「データセット」とは、ひとまとまりのデータのことです。当たり前でしたねm(_ _)m特に、用語の定義はありませんので、一般的な言葉として受け止めればよいでしょう。

ハイブリッドシステムは、その目的を満たすことを保証するように設計すべきであると言っています。

(“..)φ;ここはどうかな?あってもなくても良いような文章のように思いますが…。これがあるおかげで、文書化しておかなければなりませんね。この文章をあえてリスペクトするなら、「電子記録の監査証跡に、変更、修正、削除などに関する「Why:理由」が記録されないシステムでは、紙の記録に記入して、監査証跡の一部を紙でレビューする…というような設計をしました」ということになるのでしょうか。

その他の記録について

データが写真や画像などに取り込まれる場合、ライフサイクル全体にわたってそのフォーマットを保存するための、追加管理を考慮しなさいと言っています。

(“..)φ;例えば、取り込みソフトのバージョンがかわって、オリジナルのデータが利用できなくなったということが無いようにしなければなりません。ソフトはバージョンアップされたり廃版になったりします。また、OSが変わることで、使用できなくなることもあります。このようなリスクを予め想定して、管理方法を定め、必要に応じて追加管理しなければなりませんね。

また、劣化の問題について、薄層クロマトグラフィーを例にあげています。このまま保存するわけにいきませんよね。オリジナルのフォーマットを保持することができない場合、代替機能を考慮して、それを選定した根拠を文書化しなさいと言っています。代替機能として、写真やデジタル化を例にあげています。

(“..)φ;データインテグリティの領域で、培養後の培地についてもよく議論されています。今までは、一部の大手企業が実施している“nice to have”で、「GMP要件ではない」と個人的には位置づけていました。しかし、このガイダンスの位置づけ(前述)を考えた場合、MHRAの査察に関しては、GMP要件に準ずると考える必要がありそうです。せめてもの救いはリスクベースアプローチですが、これからの潮流は「デジタル化」で電子記録やハイブリッド記録にするか、プリントアウトして試験記録の一部とする所まで来ているようですね。しかし、どこかで歯止めをかけてほしい気もする(T_T)