「回答は質問に答えたか」― FDA査察から見た目のつけどころとチェックポイント

今回取り上げるのは、FDAが2026年9月23日付でJiangmen Shuizirun Sanitary Articles Co., Ltd.(中国)に対して発出したWarning Letterです。この会社は、米国向けにOTC医薬品を製造しています。原文は以下のURLに掲載されています。また、ブラウザの翻訳機能を使用すれば日本語で読むことができます。

https://www.fda.gov/inspections-compliance-enforcement-and-criminal-investigations/warning-letters/jiangmen-shuizirun-sanitary-articles-co-ltd-722974-09232026

今回注目したいのは、違反事項リストの1番目、21 CFR 211.113(b)の無菌性保証に関する指摘です。特にFDA-483に対する会社の回答を考えてみました。

この会社は、無菌と表示した製品を製造していましたが、滅菌を実施せず、出荷時の無菌試験も行っていませんでした。

会社はFDA-483に対して、「当社の製品は、試験成績書(COA)に規定された微生物限度に適合するよう管理された工程で製造しています」と回答しました。

しかし、FDAは、COAには無菌であることが示されていないと指摘しました。実際、規格は一定数の微生物の存在を許容するもので、菌が検出されたロットもありました。

この会社は、なぜこのような回答をしたのか。私は、個人的に興味が湧きました。この回答の何が問題だったのでしょうか。

微生物限度への適合と無菌性の保証は、そもそも異なるものです。無菌性を表示する製品には、無菌性を保証するための適切な製造工程と管理が必要です。これは日本のGMPもPIC/S GMPも同じ考えです。

ここで、FDAがこの回答をどのように評価したのか、私なりにその思考プロセスを推論してみました。

無菌と表示している
↓
どのように無菌性を保証しているのか
↓
微生物限度への適合を説明して答えている
↓
なぜ、それで無菌性を保証できると考えたのか
↓
製品の品質要件と管理方法の整合性を誰が確認したのか

さて、次に会社側の心理を想像してみます。

「微生物管理をしているのだから問題ない」という思い込みがあったのでしょうか。それとも、指摘に対して何か根拠を示さなければならないという気持ちから、手元にあるCOAを持ち出したのでしょうか。もちろん、実際の事情は分かりません。

ただ、人は問題を指摘されると、つい自分たちが実施している管理の正当性を説明したくなるものです。私も経験したことがあります。

怖いのは、こうした思い込みが品質システムに入り込むことです。品質要件と管理方法が一致していなくても、手順どおりに製造し、規格に合格していれば大丈夫と考えてしまう。運用上の注意や試験結果だけで不足を補おうとすれば、同じリスクが繰り返されるかもしれません。

今回のWarning Letterは、FDA-483への回答を作成するときには、指摘の本質を理解し、自分たちの前提を問い直すことの大切さを教えてくれるように感じます。

私たちは指摘を受けたとき、相手が何を問題としているかを理解する前に、「自分たちはきちんとやっています」と説明しようとしていないでしょうか。製造だけでなく、QAやQC、さらには経営陣にも思い当たることがあるかもしれません。