「海外製造所のGMPを誰が監督するのか」― FDA査察から見た目のつけどころとチェックポイント

今回取り上げるのは、FDAが2026年10月14日付で某社の経営者に対して発出したWarning Letterです。査察対象は、ベトナムにある海外グループ会社で、米国向けのOTC点眼剤(無菌製剤)を製造しています。原文は以下のURLに掲載されています。また、ブラウザの翻訳機能を使用すれば日本語で読むことができます。

https://www.fda.gov/inspections-compliance-enforcement-and-criminal-investigations/warning-letters/rohto-pharmaceutical-co-ltd-733215-10142026

今回のWarning Letterには、データインテグリティ、無菌製造、逸脱調査、さらに米国での製品表示に関する重大な指摘が記載されています。

そのなかで、今回は最初の指摘事項である21 CFR 211.194(a)および211.67(a)に注目し、海外製造所に対する経営監督と品質監督について考えてみたいと思います。

FDAは、環境モニタリングや作業者のモニタリングで、実際にはサンプリングしていないのに、未使用の培地を試験室に提出し、試験したことにしていた事例を確認しました。さらに、実施していない清掃作業を実施済みとする記録も見つかりました。

従来の環境モニタリングでは、ほとんど微生物が検出されていませんでした。しかし、査察中に実際に確認したモニタリングでは、多数の微生物が検出され、ISO 5区域で約25件の逸脱が認められています。

FDAは、これらを一部の職員の不正行為にとどまらず、複数の職員、複数の記録、長期間にわたる品質システムの問題と捉えています。そして、上級管理者が製造・試験記録の完全性を確保する責任を十分に果たしていなかったと指摘しています。

ここで、FDAがWarning Letterを発行したプロセスを私なりに推論してみました。

環境モニタリングと清掃記録に虚偽があった。
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現場の監督者やQAは、なぜ長期間発見できなかったのか。
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記録の照査や現場の品質監督は、実際に機能していたのか。
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これほど広範囲の問題を、経営陣はなぜ把握し、是正できなかったのか。
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経営監督と品質監督の仕組みそのものに問題があるのではないか。

もちろん、これは私の推論です。しかし、FDAが独立した第三者による評価、日常的なQAの監督、経営陣による資源の提供と品質システムの改善を要求していることからも、このような視点がうかがえます。

日本のGMP省令やPIC/S GMPでも、経営陣の関与と品質システムの有効性は重要です。ただ、海外製造所となると、現地の責任者やQAに任せ、本社では品質報告書や監査結果を確認することで監督していると考えがちかもしれません。

しかし、報告される記録そのものが信頼できなかったら、どうなるでしょうか。ここに、グローバル市場で事業を展開する製薬企業が考えるべき課題があるように思います。

本社は、海外製造所のGMP遵守について、どのようなストラテジーを持つべきでしょうか。

私は、少なくとも、各国の規制要件を踏まえた品質方針を明確にし、海外製造所の品質リスクを本社が把握できる仕組み、現場の実態を独立して確認できる品質監督、そして重大な問題に対して経営陣が迅速に意思決定できる体制が必要だと考えます。

そのためには、QAだけでなく、QC、製造、CMCなどの部門も、それぞれの専門性を活かして関与することが重要でしょう。製造工程や設備の設計そのものに問題があれば、手順の見直しや教育訓練だけでは解決しません。「運用でカバーする」という対応を繰り返しているうちに、同じ問題が再発する構造を残してしまうかもしれません。

もう一つ重要なのは、本社が海外製造所の自主性を尊重することと、経営監督・品質監督の責任を果たすことは両立できるという点です。その役割と権限、報告すべき品質リスク、判断基準を明確にしておくことが、グローバルなGMP遵守体制の基礎になるのではないでしょうか。

今回のWarning Letterは、海外製造所で起きた問題ですが、日本国内の製造所や委託製造先についても、同じようなことを考えるきっかけになると思います。

私たちは、製造所から報告される品質情報を確認するだけでなく、その情報が信頼できること、そして現場のGMPが実際に機能していることを、どのような仕組みで確かめているのでしょうか。このようなことを再考する機会を与えてくれたWarning Letterだと思います。