FDA査察の運用コンセプト改訂版で何が変わったか
FDAは、2026年10月21日付で、医薬品の施設評価と査察に関する運用コンセプト(Concept of Operations)を改訂しました。2017年の初版との違いをまとめて、日本の製造所にどのような影響があるかを確認してみました。
今回の改訂では、主要な変更点として、以下の2項目が文書に追加されました。
【旧】記載なし →【新】リモートアセスメントを用いた施設・医薬品評価の組み込み
【旧】記載なし →【新】相互承認協定に基づく査察情報を用いた施設評価の組み込み
いずれも制度そのものが今回新設されたということではなく、運用コンセプトの中に位置付けられたものです。
変更点はこれだけではありませんが、日本から米国向けに医薬品を製造・輸出する登録施設では、以下の点を確認しておく必要があると思います。
• 遠隔評価への準備
RRA(Remote Regulatory Assessment、遠隔規制評価)が各評価プロセスに組み込まれました。記録の提出やリモートでの説明に備えて、英文資料、電子記録の抽出、担当者の対応体制などを確認しておきたいところです。リモートアセスメントを受けても、実地査察がなくなるとは限りませんので、通常の査察対応の備えも必要です。
• VAIでも、FDA内での最終評価を見据えた回答
初期分類がVAI(Voluntary Action Indicated、自主的措置を要する)の案件も、サーベイランス査察ではOMQ(Office of Manufacturing Quality、製造品質オフィス)、承認前査察ではOPMA(Office of Pharmaceutical Manufacturing Assessment、医薬品製造評価オフィス)に付託され、最終分類が行われます。指摘への回答では、根拠資料、影響評価、是正措置の有効性などを整理して説明することが重要です。
• 日本の製造所と米国申請者の説明の一致
申請に関連する査察所見は、申請の承認可否に関係します。製造工程、管理方法、変更内容、是正措置について、製造所・米国申請者・薬事部門の説明に食い違いがないか、確認が必要です。
• 供給への影響も早期に共有
改訂版は、サーベイランス(surveillance)査察やフォーコーズ(for-cause)査察の中で、製造・流通に影響し得る活動を把握した場合のFDA内の通知と、施設に対する通知要請を明記しています。製造停止や出荷制限を検討する際の社内連絡経路も、確認しておく必要があります。
• FDAの処理期限と企業の回答期限を混同しない
運用コンセプトに記載された45日・90日などは、主としてFDA内の業務期限です。企業側の回答期限は、個別の通知で確認する必要があります。
この文書を読んでみて、以上のことは再度確認する価値があるように感じました。
また、日本のGMPに適合していることだけで、FDA査察が免除されるわけではありません。FDAが公表している医薬品査察のMRA(Mutual Recognition Agreement、相互承認協定)の相手はEU・スイス・英国で、現在のところ日本は含まれていません。
今回の改訂を機に、品質保証部門・薬事部門・米国申請者の間で、必要な情報が共有されているかを確認しておきたいところです。日常の品質管理で得られた情報を、FDAからの照会や査察に対して一貫して説明できるようにしておくことが、実務上の備えになると思います。
参考資料:
[FDA 運用コンセプト 2026年改訂版](https://www.fda.gov/media/107225/download)

