GMPを勉強しよう- API- ICH Q7のQ&Aのポイント

ICH Q7のQ&A(2018年4月)がFDAのホームページで公開されました。ざっと読んでみました。この文章を読むと、GMPの条文解釈に関する論理的アプローチがよく理解できるので、原文で精読してみると役立つかなと思いました。

私たちは、論理的なアプローチが比較的苦手で、何をすればよいのかというハウツウを追いかけがちです。しかし、GMPの条文を解釈するために、または海外の人とGMPの実践についてディスカッションするときに、論理的アプローチはコミュニケーションの基本になりますので、私達にとって大切な素養の一つだと思います。

よく誤解されている内容について、暇にまかせて綴ってみました。

参考文献は、”Q7 Good Manufacturing Practice Guidance for Active Pharmaceutical Ingredients Questions and Answers Guidance for Industry ”です。

3.1の“training should be periodically assessed”とは、何を意図しているのかという質問について、「その人が自分の仕事をする技量や能力をまだ維持しているかを評価すること」と答えています。これは、人の再適格性評価を求めていることを示しています。

5.1で専用装置のクリーニングの効果のベリフィケーションは、”visually clean”で受け入れられるかとの質問について、それでよいと言っています。しかし、劣化物や好ましくない微生物の蓄積やキャリーオーバーを防止するために、適切な間隔で装置が清浄化されるべきだと追記しています。専用装置といえども、適切な間隔で効果的なクリーニング(簡易的なクリーニングではなく)をおこなう必要があるということです。クリーニングバリデーションで、適切な間隔を決定しておく必要があります。これが、5.2の質問と併せて、専用装置にもクリーニングバリデーションが必要な理由です。 ちなみに、5.2の質問は「専用装置でも残留の許容基準を決める必要があるか」と言うものです。当然、答えは”YES”です。

6.1でAPIの記録の保管期間について聞いています。ICH Q7ではセクション6.13で、” records should be retained for at least 3 years after the batch is completely distributed”しているが、「完全に出荷された」とはどのような意味かと聞いています。これはAPIのバッチを全て自社から出荷して、自社にはもう残っていないことを意味しますね。さらに、この「3年保管」についてコメントしています。ICH Q7が書かれた当時は、API製造業者が3年以上の「リテスト日」を設定することは、業界標準からみて予想していなかったということです。そこで、「APIを使用した医薬品が市場にある期間、記録を保管することを検討しましょう」と提案しています。

これは、11.4の質問事項「参考品/保存サンプル」についても、同じ様な回答です。

7.6でAPIの原料の有効期限やリテスト日を延長することができるか訊いています。

ICH Q7は、原料に対してリテスト日や有効期限を適用していないので、API製造業者が適切な科学的かつリスクベースで判断して決めるように回答しています。

包装や表示に関することは、質問がありませんでした。

11.5で、ICH Q7はなぜ参考品/保存サンプルに対して、オリジナルのものより保護できる包装システムを許容しているのかという質問がありました。これは、上記サンプルが安定性を見るためのものではないからです。

12.2で、工程の逸脱のみを基に工程パラメータの範囲を拡大できるかと訊いています。答えは"No"です。

12.3は出発物質の変更についてです。APIの出発物質の"source"と書かれています。即ち由来、起源、業者などですが、普通は業者が多いのではないかと思われます。「APIの出発物質の"source"の変更をサポートするために、追加のプロセスバリデーション調査が必要か?」と訊いています。答えは、「いかなるAPIの出発物質の変更も、API製造工程とその品質の結果に関する影響を査定すべきである」です。続いて、「APIプロセスの追加バリデーション調査は、API出発物質の変更が重要と判断される場合は実施する必要があるかもしれない。出発物質の異なる"source"は、正当化されていなければ、多くのケースでバリデーションが期待される」と言っています。

12.4は、回顧的バリデーションについてです。これは許容できるかと訊いています。答えは、「予測的バリデーションが一般的に期待される」ですが、回顧的バリデーションの概念はまだ受け入れられています。しかし、規制上のディスカッションで、その段階が重要と再定義された場合は、コンカレントや予測的バリデーションを選ぶことになるかもしれないと言っています。APIでは、回顧的バリデーションは(ICH Q7では)否定されていません。

14.1で、「不合格判定したマテリアルは、物理的かつ安全な隔離下で保管すべきか」と訊いています。ICH Q7は、それが必要だとは特定していません。不注意や未許可の使用を防止できる管理システムを選択できます。

14.2で、Q7の有効期限の定義は、有効期限切れのAPIの再加工や再処理をしてはいけないことになっているかというものです。定義どおりに解釈すれば、マテリアルを有効期限後に使用してはならないことになっています。Q7の定義の意図は、期限切れのAPIを医薬品の処方に使用してはならないというものです。しかし、APIメーカーが再処理や再加工の追加の安定性データと関連するGMPの履歴文書を持っていれば、受け入れられると言っています。Q7の範疇を超えますが、追加でGMPを考慮すると、再登録や申請を検討する必要があるかもしれませんとのことです。

(“..)φ;このぐらいが誤解しやすい領域でのQ&Aだと、個人的に思いました。