FDA Warning letter(320-20-26):FDA-483 の回答のしかた、結論の導き方の参考に

今回は、FDA-483 の回答のしかた、結論の導き方に焦点を当ててみました。論理的アプローチが弱いと、回答が不適切と評価されますので、今回の内容を他山の石としませんか。

今回の対象会社は、インドの製剤製造施設です。内容から、非無菌と無菌の製剤を同時に確認しています、そのため2週間の査察になっているようです。

指摘は、1)機器の洗浄; 2)HEPAのリークの調査; 3)スモークテストに関する3項目です。


 

<指摘事項の解説>

1.この会社は、装置の洗浄に関する適切な作業を実施していませんでした(21 CFR 211.67(a))。

具体的には、非専用の装置の洗浄手順が不適切でした。

(“..)φ:当該装置は伏せ字になっていますが、この中に打錠機が入っているようです。

査察官は、排気ダクト中に複数の異なる製品の残留物を確認しました。これを分析した結果、複数の有効成分が確認されています。

(“..)φ:交叉汚染のリスクがかなりの確立で存在するということですね。排気ダクトだからいいということではないですね。室内に暴露されているわけですから。

検査後、貴社は選択されたバッチの予備サンプルもテストし、交差汚染の可能性を評価しました。 あなたのテストでは、次の製品を含むがこれに限定されない、次の製品のバッチにおける前の製品の有効成分の存在を確認しました。

この会社の回答では、試験をして268バッチのうち261バッチからは、前に製造された製品の痕跡を認めなかったとしています。 また、排気ダクトの残留物は、製剤の汚染にリスクをもたらさないと言っています。

(“..)φ:この文章が” your belief”で綴られているのですが、根拠なくこのような言い方をするのは、FDAへの印象的にどうなのだろうかと思います。「ダクト内だから大丈夫」とか「接触しないから大丈夫」というような短絡な回答をしないように注意しましょう。

FDAは、いくつかのサンプル((“..)φ:268-261=7サンプル)から交叉汚染が見つかっていることをあげて、汚染の根本原因を明確にしていないので、回答は不適切を評価しました。

さらに、参考品の試験だけで判断するのは不十分であるとも伝えています。

(“..)φ:「参考品の試験でOKだったので大丈夫」という結論づけも短絡と言えます。原文載せておきますね。” In addition, reserve sample testing alone is insufficient to determine the scope of the cross-contamination issue and mitigate risks associated with it.”

それから、実施した試験の10%から未知のピークが検出されていますが、それにも対応していないと述べています。この会社の回答は、前の製品の標準液と未知のピークが一致しなかったので、製品のキャリーオーバー(交叉汚染)ではないと言っています。” Your firm indicated that the carryover was not confirmed because the peak did not match the (photo-diode array) peak spectra of the standard solution from the previous product.”しかし、この未知のピークを解明していない(なぜ発生したか原因を特定していない)と、FDAは続けています。

(“..)φ:未知のピークは、それ単独で調査するべきものです。問題の製品に関係なかったと結論づけて、終わってしまうものではないということですね。万一製品にリスクがなかったとしても、未知のピークはフォローアップ調査(逸脱・異常またはOOT/OOE)をするのがGMP要件ですので、そこは別途調査が必要だと言っているのだと思います。最後にFDAの結論を述べています:” This lack of a clear root cause casts doubt on whether you have fully resolved a serious cross-contamination problem.”

(“..)φ:その後、文章は続いています。キャンペーン中のキャリーオーバーの可能性が最も高い製品(最も長いキャンペーンの製品)を選択したことは、この会社が合理的根拠に基づいて行ったことを認めています。しかし、それだけではだめだとも言っています。すなわち、患者のリスクを踏まえた毒性学的なハザードの評価をしていないと注意しています。

(“..)φ:洗浄のバリデーションのワーストケースの選定は、以下のようにFDAがアドバイスしていることを以前も書いたことがあります。今回は、英文で載せておきますね。

・drugs with higher toxicities
・drugs with higher drug potencies
・drugs of lower solubility in their cleaning solvents
・drug~ with characteristics that make them difficult to clean
・swabbing locations for areas that are most difficult to clean
・maximum hold times before cleaning