品質保証部門の適正人数は?
QA部門の適切な人数は何人ぐらいかと聞かれることがあります。製造品目とロット数の他にも、計画的な品質監督のカバー率、計画外の逸脱や変更の発生数などによって違いますので、なんとも言えません。
このような質問には、一つだけお話しさせていただくことがあります。
「忙しい、人が足りないという実感は、殆どのQA部門が持っています。多くの場合、突発的に起きる逸脱への対応が、その原因になっています。ここで割かれた時間が、ルーティンの業務に影響しています。突発的な逸脱の多くが、元をたどればヒューマンエラーによるものです。これを低減するには、QAの適切な品質システム活動が必要ですが、その活動には人が必要です。しかし、人が足りないので、発生したら対処する「消火作業・もぐらたたき」になってしまい、予防のための品質システム活動ができません。そのため、品質システムが脆弱になり、また突発的な逸脱が発生します。そして、人が足りないと実感します。」
ここでの「人」は、正確には「機能」とか「能力」というべきでしょう。
いつか何処かで、根本的な改善が行われないと、潜在的な問題はなくならず、品質のリスクは漸増することになるでしょう。それにもかかわらず、このような問題は、現場からトップマネジメントに、ボトムアップで「正確に」達することは稀ではないかと思います。
最近、品質部門の業務が急増しています。リスクマネジメント、製品品質照査が要件となってすでに3年を過ぎていますが、適切な実施がままならない会社もあるようです。さらに、GDPやデータインテグリティなど、これからも要件が増えていくのではないかと感じています。
要件が増えることは、国際調和のため、医薬品品質システムの強化のためには良いことだと思います。しかし、業界は適切に実行するだけの経営資源を配分できるのでしょうか。経営資源の豊富な大企業には可能なことでも、比較的資源に乏しい中小企業ではどうなのか。もし要件を遵守できない場合、どうなるのか。品質システムの格差が広がり、消費者の厳しい選択にあって、自然に淘汰されていくのだろうか。このような疑問が湧いてきます。
「良い」方向を目指していながら、「悪い」影響が出ないとも限らない。それを修正して、環境の変化に対応するには、業界や組織の努力が必要だと思います。
まず、業務が増えるでしょうから、既存の経営資源の配分では、いろいろなものが足りなくなります。人、時間、費用、情報などです。一番感じるのは、人が足りないということでしょう。人は、適格な人ということで、情報込みの人のことです。
人が足りなくなれば、「悪い」影響がでるかもしれません。掛け持ち、盲判、斜め読み、生返事、未確認、サボタージュ、うっかりなどなど、まさか現場で起きないでしょうが、万が一起きる可能性があるとすれば、やがて品質に影響するでしょう。それは、経営にとってもマイナスです。
こんなことは、会社の姿勢次第かなと思わないでもありません。しかし、経営陣だけの問題ではなく、現場でも考えるべきことがあります。「GMP経営」は、そんなことを考え、提案していきたいと思います。