GMPは心です
もう随分昔の話です。メリーランドの小川の辺りにあるビストロで、ある人とGMPの話をしていました。私の尊敬する大先輩です。
GMPをスレスレで通したい、そんな会社が多いという話をしていました。その頃「これはGMPの要件ですか」という質問を多く受けていました。GMPの遵守はまるでノルマのような扱いで、いやいややっている感が伝わって少し落ち込んでいました。心の通わない医薬品が作られていることに、憂いを持っていた頃でした。
絵に描いたような小さなレストランで、GMPの精神について、そして、GMPの遵守のあるべき姿について、取り留めもない話をしていました。
話が心の通わない医薬品の話に触れた時でした。以前、新薬をアメリカに販売するプロジェクトの責任者をしていたその人は、当時ののエピソードを話してくれました。
プロジェクトの仕事である工場を視察していた時に、向こうからお年寄りの職員がこちらに歩いてきました。その人に「GMPとはなんですか」と尋ねたのです。GMPの三原則を期待していたのでしょう。その方は直立不動で「GMPとは心です」と答えたそうです。
心がなければGMPは守れません。品質文化も醸成できません。会社の経営理念も絵に書いた餅のようなものになります。
私はその話を聞いて、感心しました。そして、その方に「この言葉を企業の皆さんの啓蒙のために使っていいですか」とお願いし、お許しを得て使っています。それが、当所の標語「GMPは心です」です。
もう一つ、社内セミナーのときに使用するスライドには、アメリカの大手製薬企業で重職を歴任したアメリカ人の知り合いから聞いた言葉を使っています。"Good Quality is Good People" です。こちらは、「使うなら使用料を出せ」とからかわれました。いまだに踏み倒しています。
これらのエピソードや日頃の懸念から、現場職員に聞いてもらいたいと思って作成したトレーニングモジュールが、「GMPの精神と基礎知識」です。私がもっとも傾注して作った、いわば私のGMPの原点のようなものです。GMPを勉強する前に聴いてほしいなと思っているトレーニングモジュールです。
今日、ホームページに公開します。スライド資料だけですが、現場職員の皆様のお目に触れることを願っております。