GMPを勉強しよう-1-データインテグリティとレコードのインテグリティ
MHRA Data Integrity Definitions and Expectations, January 2015によれば、データインテグリティと記録のインテグリティ…微妙な違いがあるようだ。
今まで意識していなかったが、MHRAのガイダンスを読んでみて、ここに書いておこうと思った。仮想製薬工場の設立意図からは、GMP情報ダイジェストの掲示板に書くべきところなのだが、ブログに書いている理由は日本語訳にこだわらなくでよいためだ。訳出しないで済むと、数倍の情報収集ができる。
翻訳の専門家ではないので、用語の表現方法は無視してほしい。その上で、理解しておくとGMPの解釈が楽になりそうな用語をチェックしてみよう。僕が抜粋したのは、データ(data)、生データ(raw data)、データインテグリティ(data integrity)、記録のインテグリティ(integrity of record)、オリジナルの記録(original record)、真正のコピー(true copy)だ。正確には記録のインテグリティは定義として載っていない。
それから注意することは、「この定義はMHRAのGMPにおける定義」であること。例えばデータは、他の領域・業界(もしかしたら国によっても)ではより幅広い意味でとらえている。FDAが随分前にデータインテグリティについて述べた三要素のようなものとMHRAの今回のデータインテグリティの定義も、言い回しがほんの少し異なる。どちらが正しいとか、どちらがよいとか言うことではない。
「データ」の定義は、生データから導いた情報となっている。そしてデータの要件として、頭文字をとってALCOAと言っている。すなわち、Attributable, Legibele, Contemporaneous, Original, Accurateの頭文字だ。
データを導いた「生データ」は、オリジナルに作成された書式(紙または電子)に維持されたオリジナルの記録と文書、または真正コピーというややこしさだ。すなわち、所定の書式に記録されたオリジナルの記録や文書や、その完全なコピーをいう。
このガイダンスのテーマである「データインテグリティ」の定義は、データのライフサイクルを通じて、全てのデータが①完全(Complete)、②一貫(Consistent)、③正確(Accurate)である範囲(Extent)をいう。FDAでは”Consistent”が”reliability”か”reliable”だったかもしれない。よく覚えていない。
ところが「記録のインテグリティ」というのが出てきた。これは定義ではなく、文章中に出てきたのだが、”accuracy””completeness””content and meaning”のことだそうだ。ここまで含めると、FDAとMHRAの定義は大括りに括って同じと考えていいかな?
「オリジナルの記録」は生データに関連して必要な定義だ。ファイルまたはフォーマットとしてのデータで、記録のインテグリティをオリジナルで生成、保管したデータとなっている。ややこしい。単純に、所定の書式に書かれた「元データ」とか「オリジナルのデータ」といったほうが手っ取り早いと思う。
そして、オリジナルの記録と並んで「真正のコピー」が出ていた。そのままオリジナルレコードの正確なコピーと書かれている。なんだと思う。しかしその後を読んでいくと、皆さんご存知と思うが、たまに議論になっていたことを具体的事例として、丁寧にあげてくれている。例)①紙の記録の紙のコピー、②紙の記録の電子スキャン、③電子的に生成したデータの紙の記録ーすなわちプリントアウトーだ。