GMPを勉強しよう-63-MHRA データインテグリティのガイダンス 2018年
MHRA GXP Data Integrity Guidance and Definitions; Revision 1: March 2018
このブログは、MHRAのデータインテグリティのガイダンス(2018年3月1日)の翻訳ではありません。英文を解釈して、どんなことが書いてあるか、できるだけ口語体でお伝えしようと試みたものです。セミナー講師の台本を書くような感じで書いています。
この文献は、以下のウェブサイトからダウンロードできます。
MHRAのデータインテグリティのガイダンスは、はじめに1章背景が書かれています。そして、第2章のイントロダクションは、9セクションに分かれています。
これらの内容を解釈してみました。
1.Background
紙への記録からコンピュータシステムによる電子入力まで、作業の記録は多岐にわたっています。しかし、GxPなどの規則が求める要件は、紙でも電子でも同じです。「…(患者の安全性と製品の品質を確保するために)…生成したデータの品質とインテグリティに信頼性があり、活動を再構築できること」です。
2.Introduction
このガイダンスは、PIC/S WHO OECD〔GLPのガイダンス〕EMAのガイダンスと規則の英国での手引書的な位置づけとしています。これらの文書と調和して、かつ手引きとなるように作られているようです。
このガイダンスは、MHRA inspectrate〔英国の査察部門〕とパートナーとで作成しています。ユーザーが教育を通して遵守を促進することに役立てる目的で作成されています。作成者が査察機関なので、既存の要件の英国規制当局の解釈を明確にしたものになっています。
ここでは、ガイダンスに書かれていないその他の遵守に係る優先順位によって、リスクを避けるためにデータを保護するようなときは、バランスのとれた取り組みが必要だと言っています。
例えば、日本では無いかもしれませんが、言葉がわからない、字を書けない、記録媒体を持ち込めないなど、実施者がその場でデータを記録できないような時に第2者が記録して、代書された記録に実施者が署名するというような場合は、これに当たるかもしれません。
このガイダンスの範囲は、特にその他の記載がない限り、全てGxPとみなされます。例えば、具体的に記述していなくても、それはGxPの要件ではないということではありません。しかし、このガイダンスは医療機器には適用しないと言っています。
この記述は、注意しないといけないですね。例えば、ログブックの要件で「時間順序で書きなさい」というような記載があります。これは、時間を書きなさいとは具体的に言っていません。しかし、時間順序で書きましたということを証明するためには、または再現するためには、何時何分に実施したことを書いておく必要がありますね。「日付を書きなさい」といった場合、GxPの記録では年月日になります。しかし、要件は日付となっていて、年は書かなくてもよいのかなと思いますよね。このようなことを述べているセクションだと思います。
このガイダンスは、データインテグリティに対する英国の見解や姿勢と遵守を達成するための最低限の期待について解釈するためのものとみなされます。
即ち、このガイダンスには英国当局のGxPに関するデータインテグリティの考えが、明確に述べられていると考えてよいでしょう。
このガイダンスは、データのリスク、重大性、ライフサイクルなどのデータ管理について、リスクベースアプローチを奨励しています。GxPに影響するデータの特定のために、データプロセスを理解する必要があると言っています。これは、後で出てきます。データプロセスを理解して、効果的なリスクベースの管理とデータのレビューをすることができるということです。
このガイダンスは、主にデータインテグリティへの取り組みについて述べています。データインテグリティの管理は、必ずしも生成したデータのクオリティを保証するものではないというのが理由です。
データインテグリティとデータクオリティは別のものと考えましょう。
このガイダンスは、関連するGxPやガイダンスと併せて読むべきものですと書かれています。
例えば、ICH Q9などはリスクに関する情報を提供しています。前述のように、データ管理についてリスクベースアプローチが奨励されていますので、このような文書を併せて読むと、GxPを遵守する上で必要な情報が得られるわけです。
このガイダンスには、多くの用語の定義が載っています。用語がこのガイダンスのように定義されていても、他の定義が存在する可能性もあると言っています。それらのものも、適切な定義として、調和していると言っています。