「査察を受けなければ、指摘もされない?」―FDA査察から見た目のつけどころとチェックポイント

今回取り上げるのは、FDAが2025年11月6日付でKellin Chemicals (Zhangjiagang) Co., Ltd.(中国)に対して発出したWarning Letterです。この会社は、米国市場に流通する医薬品の製造業者にAPI(原薬)を供給しています。原文は以下のURLから読むことができます。
https://www.fda.gov/inspections-compliance-enforcement-and-criminal-investigations/warning-letters/kellin-chemicals-co-ltd-716228-zhangjiagang

今回のWarning Letterは、いつもとは少し違います。設備、製造、試験法、データインテグリティなどの問題が指摘されたわけではありません。

FDAは2025年7月7日から11日まで製造所を査察すると事前通告しました。しかし、この会社の米国代理人から、事前通告された査察を拒否したとの連絡を受けました。

つまり、FDAは製造所を査察していません。当然、具体的なCGMP違反も確認していません。それでもWarning Letterが発出されました。

米国の連邦食品医薬品化粧品法501(j)では、FDAによる査察を遅延、拒否、制限するなどした場合、その施設で製造、加工、包装または保管された医薬品は不適合医薬品(adulterated)とみなされます。

「査察して問題が見つかったため不適合」ではなく、「FDAの査察を拒んだため不適合」となるわけです。

これが一つ目の「目のつけどころ」です。

もちろん、査察の日程についてFDAと何も相談できないという意味ではありません。しかし、「今回は受けたくありません」(笑)で済ませられる話ではなさそうです。

もう一つ気になったところがあります。

FDAはこの会社に対して、「米国の顧客にこのWarning Letterの内容を知らせることを推奨する」と書いています。

この会社はAPIメーカーです。そのAPIを購入して米国向け医薬品を製造している会社があります。Warning Letterでは、不適合医薬品を州際通商に持ち込むことや、それを受領して引き渡すことについても法違反となり得ることを示しています。

ここまで来ると、単なる「査察を拒否した原薬メーカーの話」ではありません。

購入している原料の製造所がFDA査察を拒否したら、購入側はどうするのか。

品質監査をしている。品質契約もある。CoAにも問題はない。受入試験にも合格している。それでも、そのAPIが法的に不適合医薬品とみなされたら、これまでと同じように購入して使用し続けてよいのでしょうか。

「原料規格に適合しているから問題ない」とはいきそうにありません。

これが二つ目の「目のつけどころ」です。

原料供給者を評価するとき、私たちは「その会社のGMPは大丈夫か」を見ます。

今回のWarning Letterは、それに加えて、「規制当局がそのGMPを確認できる状態にあるか」という視点も必要なのだと知らせているように思います。FDAのガイダンスでも、合理的な説明なく事前通告された査察の日程調整を拒むことは、査察拒否となり得る例として示されています。