2026年度のFDA Warning Letter ー「1位はバリデーション」その裏側で起きていること

FDAの2026年度(2025年10月〜2026年9月)が終わりました。製剤・OTC・原薬メーカー宛てのWarning Letterを発出日ベースで数えてみると、126通。前年度の116通から少し増えています。細かな分析はこれからですが、まずは大づかみの傾向を速報としてお伝えします。なお、9月発出分はまだ掲載が続いていますので、数字は暫定です。

指摘を大きな分類で見ると、最も多かったのはバリデーションで、全体の約3分の2(67%)のレターに記載されていました。2位は品質部門の監督で55%。ここまでは、いつもと変わらず予想どおりですね。

変化があったのは3位です。昨年度は6位(28%)だった「調査」が40%に増え、原材料の試験(53%→40%)を上回って3位になりました。比率の計算ではどちらも40%ですが、数は調査が1通上回っています。逸脱やOOSが起きたときに、「原因を掘り下げたか」、「他のバッチへの影響を見たか」が問われて指摘された例が、顕著に増えています。

なぜだろう。そう思いますよね。レターの宛先を見て気づいたのですが、OTCメーカーが昨年度の79通(68%)から今年度は69通(55%)に減少し、無菌製剤に関するレターが21通(18%)から32通(25%)に増えていました。指摘の中身が変わったというより、警告される顔ぶれが変わったのではないか、と私は思いました。

そこで、126通の中身をOTCとそれ以外の製剤に分けてみました。OTCでは、バリデーションが84%、原材料の試験が59%、安定性が43%。いわば「求められていることを、行っていない」という指摘が中心です。一方、OTC以外の製剤で最も多いのは調査の51%です。たとえば、建物・施設も37%と高く、安定性はわずか5%でした。こちらは「起きた問題に、しっかり向き合えていない」という指摘だと思います。

全体の順位表だけを見ると、「うちはバリデーションはやっているから大丈夫」と思ってしまうかもしれません。しかし、日本の製薬企業の多くが属するのは、後者の集団です。そこで問われているのは、手順や記録が揃っているかどうかよりも、問題が起きたときの組織の姿勢のように思います。今年度は日本の企業宛てのレターも2通ありました。決して他人事ではありません。

現場では、逸脱の調査が「報告書を閉じること」を目的にしていないでしょうか。速報の数字が、そんなことを振り返るきっかけになれば幸いです。

最後に、このようなWarning Letterのトレンド分析は、いろいろなところで行われています。トレンドの統計の取り方は様々で、その結果、報告者によって数字が異なります。

本稿の数字は、FDAウェブサイトの公開レター(2026年10月4日時点)を、本文の語句と引用条項をもとに機械的に分類・集計したものです。多少の誤差が見込まれます。

このような統計レポートの価値は、数字や順位ではなく、トレンドや内容の分析にあります。数字と順位に注目するのではなく、どのような変化が起きているのか、その潮流を見据えていくことに意義があります。