ワークショップの課題を作ろう(1)

ワークショップ課題 リスクアセスメントの承認

前回は、ワークショップの課題を作る手順を整理しました。今回は、Fresenius Medical CareのWarning Letterを題材に、実際に考えてみましょう。

取り上げるのは、腹膜透析液バッグのリークです。

皆さんには、品質部門の責任者として、あるリスクアセスメントをレビューしていただきます。「FDAが何を指摘したか」を当てる問題ではありません。与えられた情報から、どこまで判断できるか、何を追加で確認する必要があるかを考える課題です。

 

今回のテーマ

リスクアセスメントに使った根拠は、その結論をサポートしているか。

検討の焦点をここに絞ります。印字工程の詳細な改善方法や、回収対象ロットの確定までは扱いません。

 

学習目的

演習終了時に、次の三つができることを目指します。

  1. 与件にある事実、会社の判断、未確認の仮定を区別する。
  2. 想定する危害と、その重大性を評価する根拠を説明する。
  3. 不足情報を挙げ、確認中に必要な対応を提案する。

演習対象者は、製造・品質管理・品質保証などの実務経験者です。難易度は、複数の情報を整理して判断する★★★レベルから、対応の優先順位を議論する★★★★レベルを想定しています。

 

与件

以下は、FDAのWarning Letterに記載された内容を教育用に要約したものです。

  1. 2025年8月、DELFLEX腹膜透析液バッグのリーク苦情の傾向を受け、会社は調査を開始しました。この調査では、最終的に複数バッチにわたる35件の苦情、156バッグを扱いました。
  2. 会社の調査は、印字によって生じた穴に起因するリークと判断しました。
  3. 会社のリスク管理マトリクスには、想定される危害として腹膜炎が挙げられ、最高の重大性レベル(高)が推奨されていました。
  4. しかし、実際の評価では、危害を「物的損害」とし、最低の重大性レベル(低)が選ばれていました。
  5. 会社が判断の根拠として挙げた事項には、関連する腹膜炎症例が確認されていないこと、ラベルで使用前の漏れ確認を求めていること、治療前にリークを容易に発見できるという見込み、漏れた液が外装袋にたまるという見込みがありました。

※なお、「35件・156バッグ」は調査で最終的に扱われた件数です。本課題では、その全件が調査開始時点で把握されていたとは仮定していません。また、集計期間を「3か月間」とは設定していません。

出典:FDA Warning Letter — Fresenius Medical Care、2026年8月25日

このように、必要な情報だけを簡潔にまとめて箇条書きにすると、短時間で演習に入ることができます。時間が限られている場合や、ある程度条件を限定して考えてもらいたい場合に使いやすい方法です。★レベルから★★★レベル程度までの、比較的シンプルな設問を作るのに向いていると思います。

一方、もう少し自由に発想してもらいたい時や、現場での応用力をつけてもらいたい時には、周辺の情報も加えてストーリー化する方法があります。

一般的にケーススタディといえば、ある状況をストーリーとして提示し、それをもとに話し合う形式が多いと思います。箇条書きの与件よりも広く考えることができますし、例外事項や背景事情にも目を向けることができます。その分、参加者の気づきも増えます。模擬的に現場を再現するような使い方もでき、★★★★★レベルまで柔軟に展開することができます。

以下は、今回のケースをストーリー化した一例です。

【(2)に続く】