「本当に管理されている工程とは」—FDA査察から見た「目のつけどころとチェックポイント」
今回取り上げるのは、FDAが2026年7月27日付でWoodbine Products Company, Inc.(米国)に対して発出したWarning Letterです。この会社は、OTC医薬品を製造する非無菌製剤製造所です。原文は以下のURLに掲載されています。また、ブラウザの翻訳機能を使用すれば日本語で読むことができます。
https://www.fda.gov/inspections-compliance-enforcement-and-criminal-investigations/warning-letters/woodbine-products-company-inc-729345-07272026
今回注目したいのは、2番目の指摘事項に出てくる21 CFR 211.100(a)「製造および工程管理の手順書があること」という要求事項です。このセクションは、「適切な組織的部門で、変更も含めて起案、レビュー、承認し、品質管理部門でレビューおよび承認すること」と述べています。意味的には、適切な部門(たとえば、製造)がドラフトを作成して、レビューして、「部門」承認を行い、部門承認済みのドラフトを、最終的に品質保証がレビューして承認することで、使用可能とするという流れです。ここには、直接書かれていないのですが、製造工程管理の手順書を作成するということは、工程のパラメータが設定されて、その範囲内の決められた手順で製造すれば、目的の品質基準を達成できることを実証しておく必要があります。即ち、プロセスバリデーションは、このセクションの目に見えない要件ということができると思います。( 211.100(a)→プロセスバリデーションと直接言えないので、字数を要します。)
このWarning LetterでFDAが問題にしたのは、単に手順書がないということではありません。「プロセスバリデーション」が実施されていなかったことです。
この会社には、市販OTC医薬品の工程を、再現性をもって管理していることを示すデータがありませんでした。また、実際の商業生産条件でPPQ(process performance qualification:省令やPIC/S GMPでいうプロセスバリデーションの実生産規模でのクオリフィケーションに近い)のスタディをした記録も確認できませんでした。しかし、製品は市場へ出荷されています。
FDAは「常に品質の良い製品ができる工程」であることを科学的に示すことを求めています。そのため、ここでは211.100(a)に違反すると指摘されました。
GMP省令やPIC/S GMPでは、これをプロセスバリデーションとして求めています。米国と日欧のプロセスバリデーションの定義は大きく違います。ここでは詳しく説明しませんが、FDA査察に対応する場合には、用語の使用だけでなく、バリデーションの考え方や厳密にはアプローチも違うことを知っておく必要があると思います。
「何年も製造しているから問題ない」「これまで苦情は出ていない」「これで査察は通っている(実際には見過ごされたラッキーなケース)」という考えは、もはや化石化しています。いまや経営リスクに直結する、極めて危うい「生存者バイアス」と言わざるを得ません。
経験や実績ではなく、工程が管理状態にあることを客観的なデータで説明できなければなりません。
そこで、査察官がどのような視点でこの問題に行き着いたのか、目のつけどころとチェックポイントを私なりに推論してみました。
製造手順書を確認する
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工程管理や重要工程条件を確認する
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プロセスバリデーションの記録を要求する
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PPQや商業生産条件での適格性評価の記録が存在しない
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それでも製品が継続して出荷されていることを確認する
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「工程が再現可能である」という科学的根拠なしに製造していると判断する
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211.100(a)違反として指摘する
この一連の流れから見えてくるものは、「バリデーションを実施していないこと」よりも、「品質を工程で保証するという考え方が、品質システムの中に根付いていないこと」のように思われます。
FDAが211.100(a)を繰り返し指摘する理由は、工程管理を単なる製造部門の仕事とは考えていないからだと、私は思っています。工程を設計し、科学的根拠で確認し、その状態を維持し続けることが、医薬品品質システムだからです。
私たちの周りで「いつも同じように作っているから大丈夫」という安心感が、いつの間にか「科学的に確認しているから大丈夫」にすり替わってはいないでしょうか。
本当に管理されている工程とは何かを改めて考えてみる良い機会かもしれません。

