FDA査察対策の盲点?—Warning Letter だけでは見えない「SOP記載の不備」ー後編

例5 Ultragenyx Pharmaceutical Inc.(ドラッグプロダクト製造所、マサチューセッツ州)
査察日:2025年4月 / 施設区分:Drug Product Manufacturer(遺伝子治療製品)
Observation 3c(原文)
You fail to identify an adequate root cause for repeated deviations. For example, deviations QE-004714, E-005536, and QE-006173 are related to mislabeling of quality control samples for testing. The second deviation, QE-005536, was identified as a repeated, minor deviation, and its root cause was determined to be “inattention to detail," despite an inadequate system to prevent mislabeling. In the separate deviation QE-005677, the employee missed the review of 16 logbooks, which requires review within [timeframe]. The root cause was again determined to be “inattention to detail" as opposed to a lack of a system and/or clearly defined dates in the SOP. This deviation is part of a total of five similar deviations. For deviations QE-005536 and QE-005677, no corrective and preventive actions were implemented.
【解釈】 繰り返し発生する逸脱について、適切な根本原因を特定できていない。逸脱QE-004714、E-005536、およびQE-006173は、試験用品質管理サンプルの表示ミスに関連していた。2番目の逸脱QE-005536は、繰り返し発生する軽微な逸脱として特定され、表示ミスを防止するシステムが不十分であるにもかかわらず、その根本原因は「細部への注意不足」であると判断された。別の逸脱QE-005677では、職員が時間枠内にレビューすべき、16冊のログブックのレビューを怠った。根本原因は、システムの欠如やSOPにおける明確な日付の定義ではなく、再び「細部への注意不足」であると判断された。この逸脱は、合計5件の同様の逸脱の一部である。逸脱QE-005536およびQE-005677については、是正措置および予防措置が実施されていない。
→繰り返し発生する逸脱の根本原因が「不注意(inattention to detail)」と結論付けられていますが、査察官は「SOPにシステムや明確な期日・条件が定義されていないことが真の原因」と指摘した例。SOPへの記載不備が、逸脱の再発防止(CAPA)の失敗にも直結していました。
【チェックポイント】逸脱調査において「ヒューマンエラー」や「不注意」を根本原因としている案件を再レビューしてみましょう。その背景に、SOPの記載が曖昧・不明瞭・対象範囲外といった手順書起因の問題が潜んでいないか確認するとよいでしょう。
参照元:https://www.fda.gov/media/190536/download

まとめ:SOPの「記載の不備」を見直す3つの視点
ここに挙げた5つの事例を通じて見られる共通パターンは、以下の3点に集約できるように思います。
① 適用範囲の漏れ:SOPは存在するが、特定の操作・対象物・場所・素材が適用範囲から漏れている(例1・例2)
② 具体的指示の欠如:「どこから・どの頻度で・どのように」という実行レベルの手順が抽象的・不完全(例3・例4)
③ SOP不備が品質システム全体に波及:手順書の記載不備が、逸脱の再発防止(CAPA)の機能不全につながる(例5)

Warning Letterだけを読んでいても、これらの「SOPの穴」を事前に塞ぐ視点は得にくいものです。FDA-483を活用してFDA査察官の目のつけどころを学ぶこと—それが、査察対策の力を一段引き上げる近道の一つではないでしょうか。

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