PIC/S GMP ANNEX 1 の内容に関する考察-1

WFIシステムのデッドレグは3d以下ですか?それとも6dルールを採用したシステムですか?

無菌製剤を製造している製造所では、PIC/S GMP ANNEX 1の改訂で少なからず影響を受けていると思います。改訂からすでに1年半になりますので、おおよそ対応できていると思います。しかし、この改訂はエンジニアリング的なサポートを期待していることから、ハード面での具体的な記述が多くなり、今まで対応できていなかった製造所ではコスト的、時間的、技術的に大きな負担を強いられ、もしかしたらまだ対応半ばのところもあるかもしれません。

こんなことを考えながら改めてANNEX 1について、対応する側から考えてみました。

今回は、水システムのデッドレグに関して懸念していたことをヨーロッパの友人に尋ねてみましたので、報告したいと思います。

ヨーロッパの専門家といえど、実際にANNEX 1の作成に関与した人ではないので、100%これで良いという保証はありません。また、ANNEX 1が100%完璧であると言い切ることもできません。だから、その状況に応じて改訂が繰り返されているわけです。私たちはその間で科学的根拠をもとに対応していく必要があるように思います。

今回の情報は、古いWFIシステムを持っている会社にとっては、少なくともほっとできる情報になると思います。

<ANNEX 1の内容>

ANNEX 1が改訂されて、今までなかった用語の定義が追加されました。その中に、「デッドレグ」についての記載があります。デッドレグは ”Length of non-circulating pipe (where fluid may remain static) that is greater than 3 internal pipe diameters.”「非循環パイプ(液体が停滞する可能性がある)の長さが、内径の3倍(3d)を超えない」としています。

そして、§6.7には、カッコ書きで “the avoidance of dead legs"とデッドレグの回避を期待しています。

この文章自体には問題はないのですが、デッドレグにはこのような「乱流」によって水の停滞を防ぎ、バイオフィルムの形成を抑える考え方と、水を高温にして「熱」でバイオフィルムの形成を抑える考え方があります。後者は、(詳しく書くと長くなるので)簡単にいうと内径の6倍(6d)を超えないものとして、WFIシステムの設計に用いられていました。

今回のANNEX 1は、高温システムのWFIについて区別することなく、水システムからデッドレグを回避するとしていますが、そのデッドレグは定義で「3d」なのです。

しかし、高温システムで「6d」の設計のWFIシステムはまだ多く存在しているものと思われます。そのようなWFIシステムは、配管を切断して「3d」にしなければなりません。そこに許容の余地はないのか?というのが私の疑問です。「3d」ルールが提唱されるようになってかなり長い時間が経っています。ですから、多くの会社はWFIシステムでも「3d」ルールで対応しているでしょう。しかし、「6d」ルールのWFIシステムを有する製造所は、生産を止めて配管をちょん切って、図面を書き換えて、IQ、OQやるのかという悩みがあると思われます。

前置きが長くなりましたが、そこでヨーロッパの友人に「ヨーロッパではどのように考えているのか」聞いてみました。いろいろな前置きの話は割愛します。結局、75℃以上の高温で循環しているシステムは、「6d」でよいのではないか、少なくとも管轄当局を説得できるという結論に至りました。ホッとしますね。

ちなみに、米国ではASMEルールをもとに「2d」にしている会社もあるようです。またどこかで改訂されて、ちょん切れってことにならないように祈ってます。