定期便と緊急便―医薬品CGMPに埋め込まれたManagement Review

FDA CGMPの品質システムを眺めたときに、医療機器の品質システムには、"Management Review"という言葉が明確に登場します。しかし、医薬品CGMPの直接要件(21 CFR 211)を探しても、"Management Review"という名前の直接的な要求は見当たりません。

では、医薬品CGMPには"Management Review"という考え方がなかったのかというと、私はそう思いません。その用語はなくても、その役割をもった仕組みは、分散しながらも、すでに組み込まれているのではないでしょうか。

その1つが、21 CFR 211.180(e)です。年次照査、正確には製品年次照査(PAR:Product Annual Review)といいますが、製品ごとに製造記録や品質管理記録を少なくとも年1回評価し、規格や製造・管理手順を変更する必要がないかを判断する要件です。

今日は、あまり硬い話はしないことにします。このPARは、品質情報を定期的にまとめて振り返る仕組みです。いわば、経営陣に品質情報を届ける「定期便」です。

しかし、品質問題は都合よく年1回の予定に合わせて起きてくれるわけではありません。

そこで、もう1つ仕組みが必要になります。それが、21 CFR 211.180(f)なんです。重大な苦情、返品、回収、FDAの査察所見、規制措置などについて、会社の責任ある役員(responsible officials of the firm)が直接関与しておらず、直ちに認識していない場合には、書面で通知されることを保証する手順を求めています。

こちらは「緊急便」と呼んでもいいでしょう。

定期便だけでは、次の年次照査まで重大な問題が届かないかもしれない。反対に、緊急便だけでは、個別の火消しに追われて、傾向や品質システム全体の弱点を見失うおそれがある。だから、両方とも必要だということです。

定期的に品質の状態を振り返ること。重大な問題が発生したときには、直ちに経営陣に知らせること。この2つがそろって、初めて経営陣は現場の実態を知り、必要な判断を行うことができます。

FDAのいわゆるの「品質システムアプローチ」のガイダンスは、CGMP内に分散していたこのような要件を、経営陣の責任としてまとめ直したもののように見えます。FDAの真意は何処にあるのかわかりませんが、私は個人的にそのように受け止めました。

定期便と緊急便によって、現場の品質情報が経営陣に確実に届き、経営判断として現場へ戻ってくる。その循環こそが、Management Reviewの本当の姿なのだと思います。