「プロセスバリデーションの不在」− FDA査察から見た目のつけどころとチェックポイント

今回紹介するのは、2025年9月9日付でFDAが中国の製造業者Yangzhou Yulou Paper Products Co., Ltd.に発出した警告書(CMS 710907)です。この会社はOTC医薬品の製造事業者として米国FDAに登録されています。今回は現地査察ではなく、FD&C法704(a)(4)に基づいて記録の提出を求め、回答を精査した結果、5項目の重大なCGMP違反が認められました。

原文はFDAウェブサイト: https://www.fda.gov/inspections-compliance-enforcement-and-criminal-investigations/warning-letters/yangzhou-yulou-paper-products-co-ltd-710907-09092025(ブラウザの翻訳機能を使うことで日本語で読めます。)

5項目の指摘のうち、今回注目したいのは観察事項 4(21 CFR 211.100(a))です。この会社はFDAの照会に対し、「製品に対するバリデーション活動は一切行っていない」と回答しています。部分的な不備ではなく、プロセスバリデーションそのものが存在しないという根本的な問題です。これだけ極端な事例は実務上の直接参考にはなりにくいのですが、FDAがプロセスバリデーションの概念について述べていますので、参考のために取り上げてみました。

FDAは2011年のプロセスバリデーションガイダンスで、バリデーションをライフサイクル全体にわたる継続的な活動として定義しています。プロセスクオリフィケーション(PQ)では、バッチ内・バッチ間の変動を徹底的に特性化することが求められており、「規格内合否」ではなく「変動の理解と制御」こそが本質です。GMP省令やPIC/S GMPにおいても変動管理の重要性は示されていますが、具体的な方法論が製造業者の裁量に委ねられているため、実務での意識の差が生まれやすい部分かもしれません。

製造工程を「科学的に理解・制御されたもの」として捉える視点が、組織の中に根付いているかどうか、改めて問い直す価値はあるかもしれません。プロセスバリデーションが「規制対応のための書類作業」として扱われていると、日々の製造が順調に見えていても、その品質保証の根拠は脆いものになるかもしれません。

FDAが危惧するのは個別の逸脱ではなく「再発する構造」です。変動の理解なきままに3バッチをこなして終わりにする、いわゆる「ラッキーな3回」という実態が、プロセスバリデーションの議論では度々語られます。これは単なる笑い話ではなく、多くの組織に潜在する構造的なリスクかもしれません。変動を理解しないまま製品を出し続けることは、問題が顕在化するリスクを抱えたまま市場に供給し続けることになりかねません。

皆さんの組織では、プロセスバリデーションは「完了した過去の活動」として棚に眠っていないでしょうか。バッチ内・バッチ間の変動データを定期的に見直し、それが設計の意図した範囲に収まっているかを確認する仕組みが、日常の製造管理の中に組み込まれているかどうか? そこに、問いかけの余地があるように感じます。

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