教育訓練担当者養成講座5:補足説明

ここでの深堀りは、実効性の評価について考えてみようと思います。

事例集(19-1~19-6)は6問ありますが、実効性に関しては事例集GMP19-5と19-6が関連します。

その前に、ほんの些細なことですが、個人的に追加の意見を残したいところがありますので、先にそちらを書き込みます。

GMP19-4
[問]GMP省令第19条第3号の教育訓練の実施の記録の中に教材を一緒に保存しておく必要があるか。
[答]必ずしも必要ない。教育訓練に使用した教材を確認することができるように保存しておくことで差し支えない。(事例集GMP19‐4)

「逐条解説19②」では述べていませんが、記録には教材を参照しておく必要があると思います。そうすることで、査察官が教材の内容を調べたい時にすぐアクセスすることができます。さらに、教育訓練責任者が代替わりしても、後継者がアクセス可能で、その内容を詳細に把握することができるからです。

ちなみに、欧米では教育訓練記録の保管は部門長(部長)の責任であることが一般的です。部下を育成し目標を達成するのは部長の責任です。そして、部下の人事考課も行うからです。教育訓練の記録とその評価内容は、人事考課の重要な要素の一部ですよね。部門長は見る必要があります。部下の職務の適格性や能力を知らずに人事考課をするのは無責任ですよね。

日本ではありえないでしょうが、部門長に責任がなければ、極端に言えば、教育訓練記録を見たいと言っても「NO」と言うことができるわけです。本当に極端ですよ、論理的には言えるのです。

GMP省令第19条には、品質保証部門と製造管理者が出てきますが、製造および品質部門の部門長のことは出てきません。これは、GMPの規則だからだと思います。企業では、さらにビジネスプロセスも考えて手順書を作成することが望まれます。

GMP19-3
[問]改正省令公布通知第3 の27 ( 1 )② 〔逐条解説第19条関係のこと〕ア「G M P 概論」、イ「衛生管理概論」 とは具体的にどの ようなことを意味するのか。
[答]「GMP概論」とは、関係法令を含め、GMP省令の目的、考え方等の概要をいい、「衛生管理概 論」とは、GMP省令に規定する衛生管理の目的、考え方等の概要をいう。(事例集GMP19‐3)

これを読むと、読み手によって「GMP概論」の範囲の広さと深さは一律ではないことが解りますね。文章に柔軟性があるので、さまざまな背景と裁量権の間で決まってきます。できれば、「最低限~は」と提示されているとより理解しやすく企業間の格差が少なくなるように思ってしまいます。

一方で、GMPは抽象的な表現により裁量権は企業にあるというのがルールです。企業の解釈力が問われることになりますね。

正解はないと思いますが、私は次のように考えて、欧米と同じレベルのGMP教育訓練が実施されることを望んでいます。

教育訓練の目的は、職員が自分の業務を円滑に行えるようになることが目的です。行えるようになって初めて、その業務につくことができるわけです。これがGMPの要件です。

例えば、手順書に書かれていなくとも、○○はGMP要件からの逸脱なので記録して報告するという判断ができなければなりません。そのために、自分の担当業務の範囲は、具体的な条文の解釈や当局の期待(逐条解説や事例集)を最低限知っておく必要があります。

担当業務に関連するGMPの条文解釈とQ&A(パブコメ)の解釈は必須だと思います。そのような教育訓練の教材(事例集GMP19-4)になっているでしょうか。

実効性のある教育訓練になっているでしょうか。

ということで、次は教育訓練の実効性について考えてみます。