GMPを勉強しよう(深堀りGMP 16)第15条逸脱の管理:肉付け終了

8~10は、肉付けすることは殆どありません。記録の作成と保管、そして製造管理者への報告だけです。

8と9を読んでみて、皆さんは逸脱管理責任者と品質保証部門が同じ記録を別々に作成して保存するのはおかしくない?と疑問に思いませんでしたか。そのような疑問を持ってくれたらいいなと、これは私の願望です。そして、「なにかおかしい、条文や逐条解説を一字一句読み直して、確認してみよう」と思ってくれたら、しめたものです。

実際におかしいのでしょうか。そうではありません。しかし、ここで一歩踏みとどまって考えてみると、より深い解釈ができるかなと思うのです。文章の書き方によっては、読み手に誤解を与える、または早合点させてしまうことがあるという警報です。

8と9に関連する条文を改めて見てみましょう。そして、注意深く比較してみましょう。

8に関する要件第15条第1項第3号:「前二号の『業務に係る記録』を作成し、これを保管すること。」

9に関する要件第15条第2項「製造業者等は、品質保証に係る業務を担当する組織に、手順書等に基づき、前項第一号及び 第二号により『確認した記録』を作成させ、保管させるとともに、 製造管理者に対して文書により適切に報告させなければならない。」

微妙に記録が違うんですね。逸脱管理責任者は実施した業務の記録を作成して保管し、品質保証部門は逸脱管理責任者から報告された内容を確認した記録を残すことになります。

でも、「確認しました」というだけの記録では「何を」となります。そこで、逸脱管理責任者の報告書に確認したことを署名した記録を残すことになります。逸脱管理責任者は記録を含めた報告書を作成し、品質保証部門はその記録に確認したことを署名して、それぞれ保管することになります。

逸脱管理責任者が品質部門に所属していなければ、結果的に同じ記録が2つ存在することになるかもしれません。逸脱管理責任者が品質部門に所属していれば、記録は1つですむかもしれないですね。断定できないのは、記録と報告書の書式がケースバイケース、すなわち会社によって異なるので、言い切れないということです。

このあたりは、「うちの会社では、○○です」とか「うちの会社の手順は〇〇だから」、さらに「うちの会社の〇〇で査察は通っています」ということで片付けることがあるかもしれません。そんな場合は、うちの会社は正確にGMPを解釈しているか」と一旦立ち止まって考えてみるのも勉強になるかもしれません。

会社の手順書が正しいと言い切れないこともあります。まず、自分自身でGMPの要件を読んでみて(人から聞いたことを100%信用するのは危険ですよ)、確認してみましょう。そのときに読むのは、GMP省令、逐条解説、事例集、PIC/S GMPです。それ以外のバイアスを入れないほうがよいと、私は個人的に思います。