FDA Warning letter(320-20-36):OTC(カナダ):データインテグリティ;OOS調査

医薬品GMPに関するFDAのWarning letterを紹介します。今回の対象会社は、カナダのOTC医薬品製造施設です。

指摘は、1)試験記録(DI); 2)試験法; 3)安定性試験; 4)OOS調査に関する4項目です。

このうち、1のデータインテグリティと、4のOOS調査の内容を紹介します。


WL#: 320-20-36
日付: 2020年5月29日
発行オフィス: CDER
対象会社: Cosmaceutical Research Lab Inc.(カナダ)
対象品: OTCクリーム剤
査察期間: 2019年11月18日~22日
回答受理日:2019年12月13日
GMP違反:4項目
掲載サイト:
https://www.fda.gov/inspections-compliance-enforcement-and-criminal-investigations/warning-letters/cosmaceutical-research-lab-inc-600121-05292020


<指摘事項の解説>

1.この会社は完全なデータを試験記録に含めていませんでした(21 CFR 211.194(a))。

この会社は、目的を明確にせず、曖昧な名称をつけて追加のインジェクションを行いました。

(“..)φ:後で出てきますが、非公式の結果を得るためのインジェクションも、サンプル名を入力していないインジェクションも、システム適合性試験に使用する標準品でした。

たとえば、4月25日の3:37pmに、サンプル名を空白にしてインジェクションしていました。その後、ロットのサンプルを試験したのですが、両方のサンプルは似たようなクロマトグラムとリテンションタイムでした。そして、最終結果として〔どちらかのサンプルの結果:伏せ字でわかりません〕だけを報告しました。

9月19日2:52pmのインジェクションには、●とサンプル名が入力されていました。その後に、鎮痛剤のロットのサンプル●を4:19pmに試験しました。この一連のインジェクションは、同じようなクロマトグラムとリテンションタイムでした。そして、4:19pmの結果のみを最終結果として報告していました。

(“..)φ:ということで、伏せ字が多いのですが、このWarning letterはその前に標準品を使ったことが書いてありますので、解釈としては標準品のデータを最終結果として報告したように思われます。もちろん、データのすり替えで、製品は出荷されているので“Critical”な指摘事項です。

それから、品質と製造に関する大量の記録がゴミ箱の中から見つかりました。

(“..)φ:こちらは、データの破棄(廃棄?)というデータインテグリティの問題です。生データを保存していないというGMP違反ですね。

(“..)φ:査察官は多くのクロマトグラムを調査したと思われます。上記の事例の時間的な隔たりからわかります。もしくは、この会社はアメリカ(お隣の国ですが)向けの鎮痛剤を5ヶ月に1回製造している?いや、これはありえないでしょうね。否定しておきます。

(“..)φ:…ということは、5ヶ月で2回データを改ざんして出荷しなければならないような不適品が製造されたということでしょうか。いずれにしても、毎ロット不合格品を製造する会社はないですね。データの偽装をする割合は非常に低いわけです(合格品は偽装する必要ありませんので)。ここで言いたいのは、データインテグリティの問題を発見するには、この低い確率で存在する記録を探すということです。10や20のデータセットの調査では、潜在的なデータインテグリティの問題(意図的であろうとなかろうと)は発見できないかもしれません。

4.原因不明の不一致に関する徹底的な調査をしていなかった(21 CFR 211.192)。

この会社のOOS調査は不適切でした。原料試験でAPIの分析結果がOOSになりました。

調査の結果、希釈のエラーが根本原因であるとしました。そして、新たなサンプルを調製して、新たに試験を実施しました。

新たな試験を行う前に、オリジナルのサンプルの●が試験中にダメージを受けたと言っています。しかし、その時には、まだオリジナルのサンプルの試験やダメージの調査をしていませんでした。

すなわち、希釈エラーが根本原因であることを科学的に示すための仮説検定(hypothesis testing)をしていませんでした。

(“..)φ:ここでFDAは以下のように言っています。

・実際の溶液、試験ユニット、ガラス器具の再分析は、試験室エラーかどうかを決定するための調査に必要なもの(an integral part of an investigation)である。

・初回の再試験が根本原因を明らかにしない場合、この評価は仮説検定と併せて試験室エラーの原因となり得るかを決定する手段となる。

・試験室エラーの決定的な証拠がない場合はいつでも、製造品質の潜在的な原因の徹底的な調査を社内で、または試験対象品の由来に応じては外部供給業者とともに実施しなければならない。

(“..)φ:調査結果から導き出す結論は、科学的すなわち論理的な裏付けに基づいていなければなりません。Why so? So what?で自問自答して、論理展開が正しいことを確認しておくことを提案します。