FDA Warning letter(20-18-62):注射剤(インド):OOS調査;データインテグリティ;建物のメンテナンス
今週は、Warning letterが2通出ています。1通は、米国のOTC医薬品製造施設ですが、対象医薬品は未承認のものです。
もう1通は、インドの注射剤製造施設です。水害にあった建物のメンテナンスができていませんでした。データインテグリティについては、製造記録の記入に関して指摘されています。
今回は、後者のWarning letterを紹介します。対象会社は、インドの注射剤製造施設です。
警告書の宛先は、インドの” Baxter (Claris Injectables Ltd.)”の社長あてですが、Carbon Copyで、イリノイ州の”Baxter International Inc.”のCEOに発信されています。
指摘は、1)OOS調査; 2)データインテグリティ; 3)建物のメンテナンスに関する3項目です。データインテグリティは、製造記録の記入に関する指摘です。
WL#: 20-18-62
日付: 2018年7月5日
発行オフィス: CDER
対象会社: Baxter (Claris Injectables Ltd.)(インド)
対象品: 注射剤
査察期間:2017年7月27日~2017年8月4日
回答受理日:2017年8月25日
GMP違反:3項目
掲載サイト: https://www.fda.gov/ICECI/EnforcementActions/WarningLetters/ucm613538.htm
<指摘事項の解説>
1.この会社は、バッチやその原料の説明できない不一致や失敗について、徹底した調査をしていませんでした。 (21 CFR 211.192).
以下の例のように、OOS結果を適切な調査と科学的な正当化をしないで無効にしていました。
a)2017年1月の注射剤バッチの安定性試験で、不純物のOOS結果がでました。想定原因は「カラム効率が悪い」 とのことでしたが、クロマトグラフィーに異常はなく、システム適合性の基準も満たしているとOOS調査報告書には記録されていました。査察中に、ラボのマネージャー は、リテンションタイム、理論段数、テーリングファクターは適切で、特に根本原因と見られるものは証明されなかったと述べています。この会社は試験を繰り返し、合格の結果を得て、そのOOS結果を無効にしました。
2017年3月にも、安定性試験で不純物のOOS結果が出ました。このときは、分析者のHPLCバイアルの洗い方が正しくなかったとしています。新しいサンプルを調製して、第2者の分析者がオリジナルのカラム〔OOSが出たカラム〕と新しいカラムを使って試験しました。そこでもまた、OOS結果が出ました。この会社は、十分な証拠なしに調査を実施し、OOSの結果はサンプルのバイアルが汚染されたためと結論づけました。残りのサンプルで合格の結果が出た後、そのOOS結果を無効にしました。
(..)φ;これらは、合格結果が出るまで「繰り返し分析」したデータインテグリティの問題です。同時に記録する要件に違反しています。
b) 加速安定性試験のOOS調査も不適切でした。伏せ字でわかりませんが、許容範囲を超える%のOOS結果が出ています。調査は割当可能な根本原因を証明していませんでしたが、分析を繰り返してそのOOSを無効にしました。この調査では、製造に関するPhase IIの調査をしていませんでした。
2.この会社は、バッチの製造管理に関する完全な情報を持ったバッチ製造記録を作成していませんでした。 (21 CFR 211.188).
査察官は、信頼できないデータを記録している作業者を観察しました。具体的には、2017年7月27日、作業が終了した1日後に、注射剤の目視検査のデータを入力している作業者を観察しました。その記録は、目視検査は2017年7月26日に終了したと書かれていました。
(..)φ;これは「バックデーティング」というデータインテグリティの問題です。
3.この会社は、建物を良い状態にメンテナンスしていませんでした。 (21 CFR 211.58).
査察官は、この施設で水害があった顕著な証拠を観察しました。歪んだ天井のパネル、水たまり、水垢が見られました。例えば、医薬品の包装区域と品質管理試験室の外の人用の廊下の天井灯、通気口、天井に水害の証拠がありました。
さらに人用の廊下の天井パネルを観察し、●はシールされておらず、建物のプレナムのエアーが滅菌後の区域に入り込こめる状態でした。