FDA Warning letter(320-18-55):API/製剤(オーストラリア):OOS;品質部門;試験室管理;データインテグリティ

医薬品GMPに関するFDAのWarning letterを紹介します。今回の対象会社は、オーストラリアのAPIおよび製剤製造施設です

指摘は、APIが1)OOS調査とCAPA; 2)品質部門に関する2項目、製剤が1)試験室管理; 2)データインテグリティ; 3)品質部門に関する3項目です。

データインテグリティの問題が指摘されています。微生物試験に関するものもありますので、確認しておきましょう。

 


WL#: 320-18-55

日付: 2018年5月23日
発行オフィス: CDER
対象会社: IDT Australia Ltd.(オーストラリア)
対象品: APIおよび製剤
査察期間:2017年12月4日~8日
回答受理日:2017年12月22日
GMP違反:API2項目、製剤3項目
掲載サイト: https://www.fda.gov/ICECI/EnforcementActions/WarningLetters/ucm609195.htm


 

<指摘事項の解説>

API

  1. この会社は、OOSの結果を適切に調査して、是正処置を実施しませんでした。

この会社は、2015年10月23日に不合格を出してバッチを却下しました。そして、その日に調査を開始して、数ヶ月かけて2016年3月20日に調査を終了しました。2016年3月に根本原因を決定しましたが、2017年の査察当時にまだ是正処置を実施していませんでした。この間2年かかっていますが、品質部門は少なくとも●バッチのAPIを出荷していました。

 

  1. この会社の品質部門は、重大な逸脱が調査されて、解決されていることを確認していません。

規格を超える●CFU / g以上の総好気性菌数が測定されたにも関わらず、そのバッチを2015年4月30日に出荷判定しました。このAPIは、無菌製剤を製造する会社に販売されました。

この会社は、2015年4月15日に不合格の結果を確認し、OOSの調査を開始しました。2015年4月24日に調査を終了し、証拠がないにもかかわらずバイオハザードのキャビネットが汚染したものと判断して、そのバッチを出荷判定しました。

 

製剤

  1. この会社は、適切な試験室管理の仕組みを確立しませんでした。(21 CFR 211.160(b))

この会社の●に使用される●システムの微生物試験の複数の結果は、TNTCが観察されたときに「>80 CFU」と報告していました。この結果を得た数日後、再サンプリングしてコロニーが数えられるまでサンプルを希釈しました。希釈したサンプルが許容範囲内にある場合は、オリジナルの結果を無効としました。このサンプリングと試験法は、もしかしたら不適切な●システムの微生物の結果をマスキングしている可能性があります。

 

  1. この会社は、規格を保証するために必要な試験の完全なデータを、試験記録に含めていませんでした。(21 CFR 211.194(a))。

試験記録をレビューした結果、不適合となった複数の試験結果を報告していませんでした。

(..)φ選択的報告にあたるデータインテグリティの問題です。

分析試験では、確認試験が連続で失敗し、4回目に出た合格の結果のみが報告されていました。そして、この不適合の結果は調査されませんでした。査察の時点で、分析者が報告していないことに気づいていませんでした。

(..)φ;これはデータインテグリティの問題の検出またはレビューの訓練または手順ができていないというデータインテグリティの問題です。

 

この会社の回答は、手順を見直し、分析者を訓練して、すべてのデータが報告されることを保証すると述べています。しかし、確認試験の不適合の調査をしていないことから、回答は不適切と判断されました。

洗浄水の微生物試験では、2017年11月23日、11月24日、12月1日のサンプルの結果は、●平板が破壊される前に報告されていませんでした。

(..)φ;ここは注意してくださいね。

この会社はインキュベータの温度マッピングの結果が失敗したため、培養平板を破壊したと言っています。失敗した温度マッピングの結果の調査では、平板の結果は合格していましたが、各平板の菌数は記録されていませんでした。

 

  1. この会社は、適切な品質管理部門(QCU)を確立していませんでした。( 21 CFR 211.22(a))

品質部門は、●製品の出荷判定および安定性のためのHPLCの分析データをレビューしていませんでした。

HPLCの電子データをレビューしたところ、少なくとも100回の「テスト」インジェクションが見つかりました。この会社の分析手順と試験法は、「テスト」インジェクションについて記述していませんでした。試験監督者は、承認用のデータパッケージを提出する前に、このインジェクションのレビューをしていませんでした。試験監督者と品質部門は、分析者が印刷して、提出したクロマトグラムしかレビューしていませんでした。分析者は「テスト」インジェクションのクロマトグラフを印刷していなかったので、それをレビューすることはありませんでした。

(..)φ;品質監督不足ですね。少なくとも、HPLCの監査証跡をみて、完全なデータセットが報告されていることを確認する必要がありましたね。