VHPの脆弱性(アイソレータの除染に関して)

MHRA Inspectrateの記事に、こんなものが載っていました。このブログの筆者は、Andrew Hopkins さん、EU GMPのAnnex 1とPIC/S改訂の委員長です。

英国は、アイソレータの除染に関する新しいルールづくりをしています。この内容が、EU GMP Annex1の最終版に反映されるかどうかはわかりません。Brexit控えてますから。

アイソレータの設計が、直接/間接的な製品接触パーツの滅菌について、常に検討されているわけではないと言っています。

筆者の言う直接/間接的に接触する部品とは:
間接的製品接触パーツとは、構成部品などに接触するパーツで、そのものは製品に接触しないものです。例えば、閉塞パーツのようなものです。直接的製品接触パーツとは、製品がそこを通過するようなパーツです。例えば、充てん針やポンプなどです。

問題が持ち上がったのは、多くの製造業者が強力な滅菌システムを持っていないということでした。例えば、オートクレーブや乾熱滅菌や放射線滅菌などではないということです。

どうしてVHP(過酸化水素のベーパー)を直接/間接的製品接触パーツの滅菌に使うことができないのでしょうか。それは、VHPが局方で滅菌剤(sterilising agent)と呼ばれているからです。VHPは理想的な条件下では、最大6Log減少を達成できます。MHRA(原文は"our concern")の懸念は、滅菌プロセスが脆弱だということです。

過去に思いを馳せると、VHPによる滅菌プロセスで問題が見られていました。例えば、これは滅菌プロセスの研究ではないですが、Log3減少を証明するための調査では、BI(生物学的指標体)を各ポイントに3個ずつ配置することが推奨されています。これは、統計学的にBI が1~2箇所にで問題を起こすことがわかったからだそうです。

(“..)φ;詳しく知りたい方は、この文献を参照して下さい。
“Biological indicators don’t lie, but in sporicidal gassing disinfection cycles do they sometimes confuse the truth?”, European Journal of Parenteral & Pharmaceutical Sciences 2009; 14(1): 5-10 © 2009 Pharmaceutical and Healthcare Sciences Society

こんなことから、直接的/間接的製品接触パーツの設計を検討すると、VHPの侵入が困難なものがいくか見られたそうです。また、ダメージを受けた表面や摩耗、裂けた表面は、洗浄しにくいため侵入しづらくなります。

こんなことから、MHRAの現在のスタンスは、重要な物を滅菌するためにVHPを使用することはできないということです。滅菌プロセスの懸念を取り除いたとしても、手作業のセットアップの変動のリスクが残ると言っています。

(“..)φ;ちょっと皮肉っぽいと思ってしまうのですが、彼はこのように言っています。

逸脱調査において、「ヒューマンエラー」が高い比率で根本原因になっているのを、どのぐらい見てきただろう。だから、手作業のセットアップがある限り、リスクは常にあるということです。
結論は、「従って、高リスクのオプションであり、このような脆弱なプロセスから患者のリスクの可能性がある」ということです。

それでは、MHRAは何を期待しているのでしょう?

直接的/間接的接触パーツの滅菌は、Annex1の要件を満たす強力な滅菌法を使用することを期待しています。

滅菌剤が一貫性と再現性をもって全ての重要表面に到達するために、湿熱/乾熱滅菌など一般的に求められる滅菌プロセスを必要とする。

そのパーツは、カバーまたは容器に入れて滅菌プロセスから取り出す。または、搬送アイソレータから製造アイソレータへというように、グレードAの条件下で移送する。

そのパーツは、アイソレータがVHPサイクルで完全に除染されるまで、アイソレータの環境に暴露しない。

これが、MHRAの期待するところです。

MHRAは、「VHPが許容できないアプローチであるとは決して言えません」と言っています。しかし、滅菌や他のGMP要件とは異なるアプローチを検討している製造業者は、早い段階で当局と話し合うことが望まれます。それが、コストセーブになると結んでいます。