職人のことば
GMPの教育訓練で、品質文化の醸成について触れることが多くなってきた。
品質文化は、マネジメントのイニシアチブがキーポイントになるので、プロジェクトが組織されていない企業の現場教育では、少し離れた話題になる。実際のところ実感がわかない。
現場では、むしろ品質文化を支える風土について、触れるようにしている。もちろん風土も企業が育んでいくものである。しかし、現場の努力が直接作用する分、文化より受け入れやすい話題を提供できるような気がする。
教育訓練の参考になるかなと思い、読んでみたのが「現場で生まれた100のことば」である。
「モチはモチ屋って言うけれど、本当にいいモチを作るには米作りから知らなければならないって」(小関,2008,100)
現場で鍛え上げた職人の言葉は、同じフレーズでもずっしり重く感じる。逆に、机上の知識を右から左に受け渡すだけの自分の言葉は軽すぎる。苦労して得た情報でも、それだけでは聞いてもらえる価値はない。もっと米作りを勉強して、根っこのある言葉で、魂を込めて話したい。
この本の中で、経営に役立ちそうな引用があったので、少し長いが紹介したい。
「不良品にはならなくても、”こんなものを納品したら会社の恥だ”と妥協しない人と、”不良と言うわけじゃないんだから、まあいいや”と見逃してしまう人とでは、ネジのできがまるでちがうんです。ネジが積まれた山をひと目見たら、美しさがちがうんですわ。」(小関,2008,56)
参考文献
小関智弘,2008,「現場で生まれた100のことば」,早川書房