「その試験記録は品質を保証するか」― FDA査察から見た目のつけどころとチェックポイント

今回取り上げるのは、FDAが2026年10月6日付でEurofins SF Analytical Laboratories, Inc.(米国)に対して発出したWarning Letterです。この会社は、医薬品や原料の微生物試験を受託する試験機関です。原文は以下のURLに掲載されています。また、ブラウザの翻訳機能を使用すれば日本語で読むことができます。

https://www.fda.gov/inspections-compliance-enforcement-and-criminal-investigations/warning-letters/eurofins-sf-analytical-laboratories-inc-736056-10062026

今回注目したいのは、違反事項リストの1番目、21 CFR 211.194(a)の試験記録に関する指摘です。

この試験室では、微生物試験で菌数が多すぎて計数できない(TNTC)結果が得られても、その結果を記録していませんでした。しかも、一部の試験担当者が、規格に適合した試験結果だけを選択的に記録するなど、記録の不整合が2025年2月まで遡って確認されています。

さらに、微生物が0 CFUと記録された培地を査察官が確認したところ、実際にはコロニーが見つかりました。乾燥してひび割れた培地でも試験結果が記録され、0 CFUの場合に別の試験担当者が確認する仕組みもありませんでした。

会社は手順の改訂、教育訓練、定期的な確認などを約束しましたが、FDAは過去の試験成績書への影響の評価や、記録の完全性を確認する証拠が不十分であると判断しました。

試験結果を完全かつ正確に記録することは、どのGMPにおいても基本的な要求事項です。記録されていないという違反事項ですが、もう一歩踏み込んで今回の事例が示唆していることを考えてみたいと思います。それは、記録を残すという行為だけで品質が保証できるのか、ということです。

ここで、査察官の思考プロセスを私なりに推論してみました。

試験記録は0 CFUなのにコロニーがある
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なぜ誤った結果が記録されたのか
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なぜ別の試験担当者による確認がなかったのか
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なぜ不適切な記録方法が長期間続いたのか
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試験結果の信頼性を保証する仕組みは機能しているのか

この指摘を、試験者の記録ミスや教育不足として片付けてしまうと、大切な問題を見落とすかもしれません。

不適切な記録があっても、それに気づかず試験成績書が発行されるおそれがある。異常があっても気づかない。気づいても過去の結果への影響を確認できない。このような状態は、同じ問題が再発する構造的なリスクを抱えています。

私たちの周りに、手順に不足があることを承知しながら、「ベテランが確認しているから大丈夫」「運用でカバーできる」と考えることはないでしょうか。不足があれば、改める。当たり前のことですが、なぜか躊躇する。そんなことはありませんか。

今回のWarning Letterは、試験結果の信頼性を個人の技術・能力・注意力に任せず、品質システムの仕組みとその適切な運用によって保証することの大切さを示しているように感じます。

試験室では、都合の悪い結果も含めて、すべての結果が記録され、正しく評価される仕組みになっているでしょうか。