FDA「1日査察」パイロット開始——日本の製薬企業にも無縁ではない話

2026年5月6日、FDAがひとつの新しい取り組みを発表しました。「ワンデー・インスペクショナル・アセスメント」と呼ばれる1日完結型の査察パイロットプログラムです。2026年4月から試験的に開始され、4月末時点でおよそ46件が実施済みということです。

仕組みはシンプルです。従来の標準的な査察を補完する位置づけとして、よりコンパクトな「スクリーニング型」の査察を実施するのです。施設の選定には、製品の種類、過去の査察結果、操業の実態といったリスクベースの基準が用いられます。このパイロットプログラムの大半の結果はNAI(措置不要)で終わっていますが、重大な観察事項が見つかった場合は1日以上に延長できる柔軟性も持たせています。

FDAはこれを「既存の査察を置き換えるものではない」と明言しています。ただ、より多くの施設をカバーし、コンプライアンスのトレンドやリスクのシグナルを拾い上げ、将来の査察対象をさらに精緻に絞り込むといったデータ収集の意図も含まれているように、私は受け止めました。

このニュースリリースは、対象施設を明示していません。FDAが海外製造所を査察してきた経緯を踏まえれば、将来的に対象が広がる可能性も否定できませんが、日本の製薬企業への影響はどうでしょうか。海外まで来て1日で帰るかな?ここが怪しいところです。

アメリカ向けに医薬品を製造・輸出している国内企業、あるいは外資系の国内製造拠点は、FDAのEstablishment Registrationに登録されており、原則として査察の対象にはなりえます。これまでの査察は、事前通知なしの抜き打ちが原則とはいえ、実際には一定のサイクルで来訪するイメージがありました。しかし1日型の短期評価が加わることで、「査察の頻度と形が多様化する」という新しい局面に入ったと受け止めるべきかな、と思っています。

特に注意したいのが、「登録情報と実際の操業との乖離」がFDA査察のリスクベースアプローチにおけるリスクスコアに使われるという点です。GMP現場では、製品の追加・製造規模の変更・製造設備の更新などに伴う登録情報の更新が、後回しになっているケースがないわけではありません。短い査察であっても、こうした不整合が目に留まれば、そのまま通常の査察へとエスカレートする可能性もあるかもしれません。そこが最もリアルなリスクなのかなと思います。

準備として企業が今すぐ確認すべきことは、大きく三点あると思います。まず、FDA Establishment Registrationの内容が現在の操業実態と一致しているか。次に、日常的なSOP管理・逸脱管理・変更管理の記録が、短時間の確認にも耐えられる状態にあるか。そして、突発的な来訪に対応できる「査察対応の初動体制」が担当者に浸透しているかどうかです。

1日で帰ってもらえるためには、1日で示せる証拠を日頃から整えておくこと。それが最善の備えではないかと、私は思います。

海外まで来て「1日で帰るの」と一瞬思いましたが、無通告査察になるので明日は違う会社ということもないではないか…登録している限り、可能性やリスクがゼロにはならないということです。何があってもおかしくないな…皆さんはどう思います?

対象記事:FDA News Release
“FDA Launches One-Day Inspectional Assessments to Strengthen and Expand Oversight
For Immediate Release: May 06, 2026
URL: https://www.fda.gov/news-events/press-announcements/fda-launches-one-day-inspectional-assessments-strengthen-and-expand-oversight

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