監査証跡のレビューについて(3)
PIC/Sのガイダンス9.6は、リスクマネジメントの原則に従って監査証跡のレビューの方針を決めなさいと言っています。そして、作業の重要な監査証跡はバッチ出荷判定前にレビューするべきであるとしています。
誰がレビューするかというと、そのデータを生成した部門です。そして、必要なら品質部門が確認しなさいと言っています。
この「必要なら」というのは、該当するGMPの条項が求める場合と解釈できます。品質部門が試験検査部門や製造部門のデータをレビューすることを求めているGMPでは、品質部門のレビュー("verified")が必要です。
PIC/Sのガイダンスは、「例えば、自己点検または調査活動中に」(“during self-inspection or investigative activities")と言っています。この「例え」は少し紛らわしいかもしれません。自己点検を「定期的、例えば年1回行っている自己点検」と解釈したり、調査活動を「なにか説明できない異常や逸脱が発生したときの原因究明調査」と解釈してみてください。会社の手順によっては解釈が変わる可能性がありそうですね。
ガイダンスの「このレビュー("This review")」は、前述の「出荷判定前に行う重要な監査証跡("Critical audit trail")のレビュー」を指していると思われます。このように考えた場合、品質部門が必要に応じて出荷判定前に「自己点検や調査活動」で実施すると読むことができます。
「自己点検や調査活動」はたとえ話なので、これらを削除するとわかり易い文章になると思います。例えば(…)、
原文:"This review should be performed by the originating department, and where necessary verified by the quality unit, e.g. during self-inspection or investigative activities."
削除後:"This review should be performed by the originating department, and where necessary verified by the quality unit."
“where necessary"は、「GMPの要件に応じて」と読み替えましょう。
PIC/Sのガイダンスは、その国のGMPが求めるなら、品質部門が出荷判定前に監査証跡を検証するべきであると言っているのではないでしょうか。
PIC/Sのガイダンスの絶対要件は、データ生成部門が監査証跡のレビューを実施するということです。
ちなみに、FDAのガイダンスでは(バッチ記録:試験記録を含む)は、出荷判定前に品質部門がレビューして承認しなさいと言っています。これが絶対要件です。そして、ある記録(例として、バッチ製造記録をあげている)については、その活動を第2者チェックする人がレビューした記録でもよいと柔軟性を与えています。
原文:"For example, all production and control records, which includes audit trails, must be reviewed and approved by the quality unit (§ 211.192). The regulations provide flexibility to have some activities reviewed by a person directly supervising or checking information (e.g., § 211.188). FDA recommends a quality system approach to implementing oversight and review of CGMP records."
そこで、PIC/SとFDAのガイダンスをミックスすると、監査証跡のレビューは;
1)実施部門がレビューを行い(PIC/Sの絶対要件)
2)出荷判定前に品質部門がレビューを行う(FDAの絶対要件)
となるのかな。皆さんどう思いますか。