監査証跡のレビューについて(2)

前回の続きなので、この問題が決着した方には冗長な情報です。

監査証跡の確認は、誰がいつ行うのか?

マニュアルで生成した紙の記録(以下、紙の記録)と電子的方式で生成した電磁記録(以下、電磁記録)を並べて比較すると解りやすいかもしれません。

紙の記録を訂正するときに、1本斜線で取り消してデータを「変更」し、「理由」を書いて。イニシャルと日付をつけて署名します。電磁記録を訂正するときに、削除して再入力します。これが監査証跡に入力者の特定とタイムスタンプとともに残されます(電磁記録の場合、理由は別途入力します)。

この訂正をレビューして正当性を評価するのは、製造記録や試験記録なら第2者チェック(ダブルチェック者)と出荷判定前の品質部門の担当者ということになります。

在庫記録や校正記録など、ロットの出荷判定前にレビューを必要としないものをサポート文書といいます。これらは品質に影響する文書なので、品質部門が自己点検中にレビューするのが業界標準です。いわゆる"Quality oversight"、品質監督とかQA監視とか言われています。

記録や文書の性質によって、GMPはレビューする人やタイミングを定めています。

それでは、バッチ記録(ロット製造及び工程管理記録、包装記録、試験記録)は誰がいつレビューするのですか。紙の記録の「訂正」は誰がいつレビューするのですか。

GMPでは、作業の実施に関して第2者がチェックしたり、その手順の担当部門の管理者がチェックして署名しています。そして、出荷判定前に品質部門がレビューして承認しています。

電磁記録の場合、「訂正」は「監査証跡」と読み替えましょう。答えは、紙の記録と同じです。

ところで、「訂正」がない場合はどうするのですか。「訂正」がなければ、紙の記録も電磁記録もレビューする必要はないですね。ただ一点、もし品質部門が「訂正していないけど本当にこのデータなの」と疑問に思った場合は、出荷判定前に実施者にインタビューしたり、監査証跡を確認したりするかもしれません。いわゆるバッチ記録の調査活動です。

また、品質部門は定期的に実施する自己点検で、もしかしたら「データインテグリティの問題」はないか、担当者にインタビューしたり、監査証跡システムを検証したりするかもしれません。これは、出荷判定の活動とは別のプログラムです。

ここまでの結論は、監査証跡はGMP要件に従って、GMPが定めた人が、GMPが定めたタイミングで実施するということです。紙の記録と電磁記録で、GMP要件に違いはありません。

PIC/Sのガイダンス9.6は、リスクマネジメントの原則に従って監査証跡のレビューの方針を決めなさいと言っています。

この続きは、また書き込みます。<続く>