査察を拒めば市場を失う―FDA Import Alertという現実
2026年6月、中国の医薬品メーカーYangzhou Hongshengding Chemical(YHC)に対し、FDAはWarning Letterを発行しました。理由は記録の提供拒否です。FDAはFD&C Act第704条(a)(4)に基づいて、電子メールで記録の提出を複数回要求していました。代理人が一度だけ延長を申請したものの、それ以降はすべて無視でした。FDAは、Warning Letterを発行する12日前の2026年6月3日に、Import Alert 66-79に掲載しました。
Import Alert 66-79とは何ですか? 正式名称は「Detention Without Physical Examination of Drugs From Foreign Establishments Refusing FDA Inspection」です。物理的査察を拒否した外国施設の医薬品を、米国到着時に現物確認なしで差し止める措置です。今回のように記録の提出を拒んだ場合も、同様に適用されます。Import Alert のリストに掲載された施設の製品は、事実上、米国市場への流通が止まります。
日本の製薬企業や原薬メーカーがこのリストに載るとどうなるのでしょうか。まず、米国向けのすべての出荷が税関で差し止められます。新薬承認申請や既存製品のサプリメントの申請も凍結されます。
そして、取引先のアメリカの製薬会社は、代替供給業者への切り替えを即座に検討することになります。一度失った信頼と取引関係の回復には、査察の受け入れとFDAへの是正措置報告、さらに承認が必要で、早くても数年を要します。
FDAは現在、査察前に記録を遠隔要求する方法を積極的に活用しています。「査察を受け入れなければいい」という時代は終わりました。FDAの記録要求に対して応答しない場合も、査察拒否と同等に扱われます。日本企業にとって、FDAへの誠実な対応は義務ではなく、市場を守るための経営判断ということになりますね。

