Barr Laboratoriesが勝ったのかな?

1993年にアメリカ合衆国(FDA)とBarr Laboratoriesが、GMPの遵守に関して法定で争うことになりました。1993年ってずいぶん古い話だし、今更関心を持っても意味ないと思いますよね、普通は。でも、凡例を知っていると、今のGMP業界標準と遵守の「なぜ」がわかるかもしれません。

この判例は後に、私達に遵守に関する多くの情報を与えてくれることになったからです。例えば、洗浄のバリデーション、混合均一性のサンプルサイズ、逸脱調査の時間枠、規格外試験結果、再試験と再サンプリング、バッチの出荷判定などです。

誤解のないように前置きしますと、Barr Laboratoriesは立派なジェネリック医薬品メーカーです。

ちょうどFDAがBarr Laboratoriesに禁止命令(injunction)を出したのは、データインテグリティで有名なジェネリックスキャンダルがあって、ジェネリックメーカーに厳しい査察を行っていた頃でした。この会社は、第3の選択をしました。すなわち、工場のシャットダウンではなく、FDAとの同意判決でもなく、裁判所で争うことを選択したのです。

係争の中には、FDAが勝ったものも負けたものもあります。負けてもゾンビのように復活した、FDAのカレントGMPもあります。

このようなことを紐づけたり考えたりして読むと、結構ためになるし、面白いものです。

表題の件ですが、Barr Laboratoriesの言い分が通ったものがありますが、それはゾンビとなって、後にガイダンスにしっかり書かれることになりました。すなわち、負けるが勝ちも含めて、FDAの全勝です。そのゾンビガイダンスは、OOSのガイダンスと分析法バリデーションのガイダンスです。

裁判は常に正しいとは言えませんよね。裁判官は法律の専門家ですが、医薬品やGMPの専門家ではありませんし、事業所を評価するGMP査察の専門家でもありません。FDAが「そうじゃないんだけど」と主張したいところでも、「あんただめでしょ」と言っちゃうわけです。

そして、FDAも常に正しいとは言えないと思います。しかし、カレントGMPはFDAが良しとしたもの、すなわちFDAが業界に期待することなので、そんな事すると裁判の結果とは関係なしに指摘されてしまいます。

Barr Laboratoriesは、USPの試験を採用していました。CGMPの§211.165によれば、薬局方の試験はバリデート不要です。しかし、FDAはバリデートしてないと言ったわけです。これは、FDAが負けますよね。しかし、FDAの視点は§211.194の適切な試験法の採用にあったのです。すなわち、薬局方の試験がこの会社で使用するのに適切であることを保証していないということです。

裁判のアプローチが悪かったのかな?裁判官には伝わらなかったということです。薬局方の試験はバリデート不要という直接要件を主張したBarr Laboratoriesの勝ちでした。

裁判はこれで終わりですが、その後どうなりましたか。

FDAの試験法のバリデーションのガイダンスは、FDAの業界に対する期待を伝えています。分析手順の適合性は、実際の使用条件下でベリファイする必要があるということです。これが裁判で言いたかったことですね。局方の試験法でも、当社の目的にかなった試験なのか、当社でも再現可能なのか、ベリフィケーションしてくださいというゾンビでした。