GMPを勉強しよう-EU GMP Annex 1 の大改正

今回のEU GMP Annex 1の大改正は、無菌医薬品の製造所に大きな影響を与えることになるでしょう。

というのも、今回の大改正は"PIC/S"および"WHO"と同時に検討されているうえ、FDAもその改正内容に大変興味を示しているからです。

そして、新たな概念や長年議論になっていた課題が、新たに要件化されているからです。

品質リスク管理のアプローチもいろいろな場面で要求されています。たとえば、ガウンのクリーニング、包装、輸送のリスクアセスメントはどうすればよいのでしょうか。汚染管理戦略の一部として検討が必要になってきます。

これらの新たな要件への対応には、多くの時間とコストが発生することは間違いないでしょう。ですから、一般的な施行の猶予期間で準備をするのは、難しそうに思います。この辺りは、一律の猶予期間というわけにはいかないかもしれません。新たな要件の内容を見ると、早くから改正への対応計画を策定し、代替案を練っておくことが望まれそうです。

私たちが取り組まなければならない課題は、ざっと挙げただけでも、以下のようなものがあります。しかし、これだけではありません。すでに実施している製造所は別として、新たに取り組んでいく製造所では、要件を解釈し(何を意図しているのかを汲んで)、実現化の方針と計画を策定して、多くの準備が必要になるでしょう。

・CCS(汚染管理戦略)… 戦略という言葉が付きました。そのアプローチの方法は?

・CCSの非無菌製品への応用 … 特にバイオ原薬はその対象だと思いますが、他にどんなものに適用することを期待しているのか?

・Disqualify(職員の非適格性評価) … その方法や考え方は?

・バリアテクノロジー(汚染管理の一部)… ハードの導入が必須となります。導入できない場合は、どのように正当化するのか、どのようなアプローチがあるのか(難しいですが)?・PUPSIT(滅菌グレードフィルターの使用前滅菌後の完全性試験)… 製品の特性や技術的にできない場合は、どのようなアプローチがあるのか?

・SUS(シングルユースシステム)… ステンレスに比べて本質的に脆弱な樹脂製システムのリスク管理はどのように行うのか?

・施設の新規設計 … パスボックスのUDF、エアーロックの分離、無死角の観察用窓や遠隔監視カメラなどなど、多くのクオリフィケーションのアプローチは? … ピザリスト(俗語です)… 

・介入時のモニタリング … その考え方は、グローブのモニタリングだけでいいのか?その他の部位は介入領域に入っていないか(オープンRABSの場合)?

まだまだ、いろいろあります。

私が個人的にホッとしているのは、微生物モニタリングのところで菌数の平均値で評価するという要件が消えたことです。平均値を客観的に正当化することはできません。専門家の意見だったのでしょうが、それは専門家の経験や知識ではなく、専門家の推論であって「自分GMP」の典型例でした。これは、結果的に良かったと思います。

(“..)φ:蛇足ですが、専門家の経験や知識と専門家の推論は、同じように思われがちですが、明確に異なります。リスクアセスメントや原因分析を行う時に、専門家(SME)の意見が物を言いますが、ここでも注意しましょう。推論はいつどのような場面でも、科学的根拠となりえません。

無菌製品製造所では、これから大きな負荷がかかることは必至です。

この機会に、ヨーロッパの友人で、無菌製品の専門家であり、現在会社の当局査察対応責任者でもある Per H. Damgaard, Ph.D を講師に迎え、「EU GMP Annex 1」日本的には「PIC/S GMP Annex 1」の大改正のポイントと対応に関するセミナーを実施します。彼のセミナーは本場のヨーロッパでも多くの参加者を集めました。それだけ、重要な改正ということですね。

◆無菌医薬品の製造に関わる方の参加をお待ちしております!

このセミナーのイントロの動画(始めの4分間)を作成しましたので、ご興味のある方は是非ご覧ください。

イントロ動画URL:
https://ncogmp.com/gmp/wp-content/uploads/2021/07/c9071106a8e57eb8875b7dea321b9a9d-1.mp4

そして、セミナーの内容や応募方法については、こちらのURLをご覧ください。
https://ncogmp.com/gmp/wp-content/uploads/2021/07/0683d208a6e9bb8f06ca637832ba53ba.pdf

皆さんとの質疑応答の時間を、90分+αとっています。通訳付きで、口頭で質疑応答を行います。この機会を利用して、皆様がお持ちの疑問点を質問して解消してください。講師は、ヨーロッパの現役の専門家です。現場感覚の、そしてヨーロッパの考え方など、微妙なニュアンスにふれることができるものと思います。