FDA Warning letter(320-19-12):OTC(スペイン):出荷判定試験;安定性試験;バッチ記録

医薬品GMPに関するFDAのWarning letterを紹介します。今回の対象会社は、スペインのOTC医薬品製造施設です。

指摘は、1)出荷判定試験;2)安定性試験;3)バッチ記録に関する3項目です。

3番目は、修正液で訂正していたり、上書きされていたり、署名と日付なしで取り消し線を引いているなどGDPに関するデータインテグリティの問題でした。

WL#: 320-19-12
日付: 2019年2月13日
発行オフィス: CDER
対象会社: Proandre SL(スペイン)
対象品: OTC医薬品
査察期間:2018年6月11日~14日
回答受理日:2018年9月10日
GMP違反:3項目
掲載サイト:
https://www.fda.gov/ICECI/EnforcementActions/WarningLetters/ucm631839.htm

<指摘事項の解説>

1.この会社は、出荷判定前に各有効成分の同一性確認と力価を含む、規格適合の判定のための試験をしていませんでした。(21 CFR 211.165(a))

Proandre Antibacterial Soap LiquidなどOTC医薬品を、同一性確認と力価の試験をせずに出荷していました。この会社では、比重、pH、屈折率、微生物試験のみを記録していました。そして、受託試験機関に同一性確認と力価の試験を依頼すると回答していますが、そのスケジュールと米国市場にある医薬品の参考品の試験計画を提出していなかったため不適切と判断されました。

2.医薬品の安定性を評価する適切な試験プログラムに従っていませんでした。(21 CFR 211.166(a))。

具体的には、3ヶ月、6ヶ月、1年、2年を含む安定性プログラムの試験ポイントに従っていませんでした。なかった。ある 1つのロットに対して、ロットを包装した日に3ヶ月の安定性試験を行い、その9ヶ月後に6ヶ月の安定性試験を行っています。

この会社の回答書には、改訂された「安定性試験報告」の手順が示されていましたが、各時点の有効成分の同一性確認と力価の試験が含まれていませんでした。

(“..)φ:上記1.で受託試験機関に依頼するということで、書いていなかったのかな??自社で行うか外部に依頼するかにかかわらず、これらの試験は出荷判定試験であり、かつ安定性の指標となる試験でもあります。この試験が手順に含まれていなければなりません。判断ミスでしょうか?ちなみに、局方に書かれている試験は出荷のための品質管理試験の位置づけです。安定性の指標として適切かどうかは、別途判断しなければなりません。もちろん同一性確認と力価は、安定性の指標の一部ですが、サンプリングのタイミングが安定性試験のタイミングでなければ適切とは言えませんね。

FDAは、この会社に” A full summary of stability data results for all batches within expiry.”を回答するように求めています。

(“..)φ:有効期間中の全てのバッチ、すなわち参考品(有効期間内のもの)を全て安定性指標試験を行って、結果を報告しなさいと言っています。指摘事項をもらうと、そのダメージはとても大きいという好例です。

3.この会社は、バッチ製造記録に完全な情報を記述していませんでした。(21 CFR 211.188)

(“..)φ:完全な情報を含まなかったということで、データインテグリティの問題になっています。GDPに関するルールが守られていません。その例をあげています。

FDA査察官がバッチ記録で観察したことは、次のようなものです:
・修正液を使用した;
・データが判読できなかった〔(“..)φ:修正液で白く塗りつぶしたから出すね〕;
・密度試験などの試験日やバッチの承認日が欠けていた;
・記入事項を上書き〔上からなぞって書き変えた〕;
・上書きや取り消し線を引いたところに署名、日付、理由がなかった;
・試験記録のレビュー〔第2者チェック〕の署名またはイニシャルがなかった。

以下、データインテグリティの改善に関するFDAの勧告を原文です。ここは、紙背に徹する精読をしていただきたく、訳解しません。

A. A comprehensive investigation into the extent of the inaccuracies in data records and reporting including results of the data review for drugs distributed to the United States. Include a detailed description of the scope and root causes of your data integrity lapses.

B. A current risk assessment of the potential effects of the observed failures on the quality of your drugs. Your assessment should include analysesof the risks to patients caused by the release of drugs affected by a lapse of data integrity and analyses of the risks posed by ongoing operations.

C. A management strategy for your firm that includes the details of your global CAPA plan. The detailed CAPA should describe how you intend to ensure the reliability and completeness of all data generated by your firm including microbiological and analytical data, manufacturing records, and all data submitted to FDA.

D. A quality unit procedure with clearly-defined responsibilities and procedures including approval and rejection authorities, second person verification, and yearly CGMP training that covers good documentation practices and ALCOA (accurate, legible, contemporaneously recorded, original, attributable) principles.