企業の買収や合併で、組織が変化し、非遵守の問題を生む
「企業買収や施設の大変更は問題を生み出す…買収は変化を生み、変化は予想外の相互作用を生み、予想外の相互作用は非遵守の問題を生むということは、みなさんが常に直面する問題です。」J. Macher, PDA Annual Meeting, Chicago, April 2005 Reported in The Gold Sheet, May 2005
この文章、どう感じますか? これは、ある時期に大合併が相次ぎ、メガファーマが続々誕生した後で、GMP遵守の問題が発生したことを伝えたものです。アナリストの言では、合併してから大体3年後に起きているようです。
非遵守の問題は人が移動したために起こりました。人の移動によって「組織の知識」が失われます。そのときには気づきません。それから3年もすると、いろいろな逸脱や変更が発生して、問題が表面化することが調査で分かったようです。
人が変わっていくのはしょうがないことですが、組織には伝承という「組織の知識」を維持する力があります。しかし、勝手に伝わるものではありません。伝える方法を考える必要があります。このあたり、うまく伝わってないことが多いそうです。
以前は、GMP遵守のために「○○が重要」という経験があり、そのため不便でも○○を用いていました。ところが、人が離職して、「○○が重要」という記憶が組織からなくなってしまいました。
合併した頃は、作業やシステムなどを急に変更しないので、何も起こりません。しかし、1年経ち、2年経ち、「ちょっと不便だな」と考えるようになり、効率を図るため「○○をするのはやめよう」と変更してしまうわけです。もちろん変更管理システムに載せて行うわけですが、検討するときに参考にするべき過去の「組織の知識」は、すでにありません。そして、変更しても大丈夫という結論がでます。
それからしばらくすると、逸脱が起きます。また、起きます。逸脱が、時々起きるようになります。「あれ?なんだろう」と思ったときには、すでに手遅れで、「○○が重要」という組織の記憶も忘れ去られています。
これが、毎バッチ発生するのなら、話はそれほど難しくありません。しかし、20バッチに1回、半年に1回しか起こらないとすれば、悲劇的な結末になるでしょう。
こんなことを、伝えています。組織が大幅に改変されるときに思い出してもらいたい話です。
この話は、CAPAの履歴を理由とともにまとめておく必要性を示唆しています。また、変更後のCAPAの効果の確認のために、ある程度の期間のモニタリングが必要であることも示唆しています。CAPAのフォローアップ計画を作成するときにも思い出してもらいたい話ですね。