「その気流は製品を守っているか」― FDA査察から見た目のつけどころとチェックポイント
今回取り上げるのは、FDAが2026年10月2日付でHanlim Pharm Co., Ltd.(韓国)に対して発出したWarning Letterです。この会社は、無菌製剤を製造する製薬会社です。原文は以下のURLに掲載されています。また、ブラウザの翻訳機能を使用すれば日本語で読むことができます。
https://www.fda.gov/inspections-compliance-enforcement-and-criminal-investigations/warning-letters/hanlim-pharm-co-ltd-734782-10022026
今回注目したいのは、違反事項リストの1番目、21 CFR 211.113(b)の要件です。無菌製造ラインのスモークスタディに焦点を当ててみました。
この製造所では、バリアの一部を開放すると、気流が鋭い角度で上方の還気口に向かい、重要区域を一方向気流で保護できていませんでした。この状態では、よりクラス分類の低い周囲の Class 10,000/ISO 7区域からClass 100 (ISO 5)の無菌操作区域に清浄度の低い空気が巻き込まれ、製品の無菌性に重大なリスクをもたらします。
さらに、設備の設計が作業性を悪くし、不適切な無菌操作によって一方向気流が妨げられていました。スモークスタディも、重要な無菌操作中の気流方向を十分に評価していませんでした。
日本ではより身近なPIC/S GMP Annex 1においても、実際の作業状態で気流を可視化し、重要区域が保護されていることを確認するよう求めています。ここで大切なのは、スモークスタディを実施したという記録よりも、何を確認し、どのように評価したかということだと思います。
ここで、査察官の思考プロセスを私なりに推論してみました。
バリアを開けると重要区域が保護されない
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なぜ一方向気流が維持できないのか
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設備や作業動作が気流に影響していないか
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なぜスモークスタディで確認された問題が改善されなかったのか
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設備設計とスモークスタディの結果を誰が、どのような科学的根拠で妥当と判断したのか
会社は設備の再設計とスモークスタディの再実施を約束しました。しかしFDAは、今後のスモークスタディの結果を適切に評価するための、QAによる品質監督が不十分だと指摘しています。
ここが今回の重要なところだと思います。気流が乱れる原因を作業者の動作だけに求め、教育訓練や運用上の注意で対応しても、設備設計に問題が残れば、同じリスクが繰り返し発生するかもしれません。
また、スモークスタディで好ましくない気流が観察されたときに、それを設備の問題として改善するのか、それとも許容可能と判断するのかは、科学的根拠と品質部門の関与による意思決定が必要になります。
今回のWarning Letterは、スモークスタディが単なる設備の適格性評価ではなく、無菌製造工程の設計と管理状態を評価する重要な手段であることを示しているように感じます。
私たちの現場では、スモークスタディの動画を見たときに「試験に合格したか」に加えて、「本当に製品を守る気流になっているか」を問いかけているでしょうか。

