GMPを勉強しよう(深堀りGMP 14)第15条逸脱の管理:肉付け中
3.品質保証部門は「確認しました」の情報伝達ではダメですね。必ず今後の対応に関する推奨や注意事項があるはずです。それを製造からの報告書に記載して、確認を返信する必要があります。
逸脱管理責任者が品質保証部門所属であれば、現場のテクニカルな知識は除いて、現場が有する情報以上に多くの情報や知識を持っています。事業所全体の品質システムの運用状況、GMP省令の深い知識、管轄当局が期待する事業所の遵守活動など、総合的に判断できるのである程度正確な影響調査が可能かもしれません。
もし現場担当者または責任者レベルの方が逸脱管理責任者である場合、過去の経歴にもよりますが、現行の包括的なGMP知識が比較的少ないため影響調査の精度がやや低くなるかもしれません(言葉を選ぶのが難しい…)。
後者では、品質保証部門の有する情報をもとに、的確なアドバイスをする必要があるでしょう。そして、製造現場はそのアドバイスを受け入れる姿勢が求められます。
品質保証のアドバイスは、特に重大な逸脱の場合、必須の取り組みです。
4.重大な逸脱であった場合は、「あらかじめ指定した者」(またはその責任の下で他の適格者)が、2の項目の他に5~7を実施することになります。
5は、製造販売業者に(速やかに)連絡することです。「速やかに」とはどのぐらいの速さを言うのでしょうか。GMP省令には「速やかに」の用語の定義は出ていません。ここで、国語辞典が必要になります。日本大辞典を開く必要はありません。インターネットで調べる程度で十分です。「速やかに」とは「可能な限り早く」という意味です。
*GMP解釈のルール:用語の定義はGMP省令の記載事項を優先する。記載が無ければ、一般的な解釈でよい。
この場合、必要な手続き(逸脱の記録、影響調査、品質保証の確認)を経た後で製販の品質保証責任者に報告することになります(GQP省令第9条)。GQP省令では製販への報告は製造業者が行うことになっていますので、逸脱管理責任者が報告するGMP省令との間には、「製造業者≠逸脱管理責任者」という差異が存在します。取決書で双方が納得するコミュニケーションルートを確立し、かつ両省令が定めた職責及び権限等の妥当性を維持する必要があります。
個人的な意見ですが、製造業者の品質保証部門を飛び越えて、逸脱管理責任者と製販業者の品質保証責任者が是正措置その他の所要の措置を講じてもよいものだろうかと感じます。その後のプロセスで品質保証部門、製造管理者、製造業者の知るところになりますが、そこまでブラックボックスですか。
まだフローチャートを出すのは早いのですが、「GMP省令改正案のポイント」(https://www.pmda.go.jp/files/000227617.pdf)の中で「逸脱管理のフローについて」の説明図(p.59)があります。このフローチャートは、GMP省令の第15条の要件を正確に反映しています。すると、前述のような感想が生じてしまいます。そして、このフローを修飾したくなってしまうんです。えいっと修飾すると、もっと後で話すかもしれませんが、省令の要件と合致しなくなるので弱ったなと…やはり話さないほうがいいかなと迷ったりもします。
GMPは全てに適用できるように柔軟性を持たせています。ですから、一事業所がそれを解釈して、事業所独特の手順を確立するのはいいと思います。しかし、対象者を限定せずに広く伝えたい場合には、GMPの記述の一部分を切り取って、あるいはデフォルメして伝えるのはルール違反ですよね。