マイGMPということ(2)

私たちは論理展開をするときに、よく三段論法という手法を用います。これは、事実や根拠に基づいた前提をもとに結論を導く、優れた論理展開の方法です。しかし、誤った前提を用いると誤った結論を出すことになります。

例えば、「クリーンルームはきれいだ」→「部品はクリーンルームに置いている」→だから「部品はきれいだ(汚れない)」という論理展開です。一見して正しいように思いますね。これが「マイGMP」の正体の一つです。

「クリーンルームはきれいだ」(グレードCだから):正しく設計されて、適切にメンテナンスされて、人・物・空気の動線が適切であれば…(この前提が抜けている)

「部品はきれいだ(汚れない)」(から保護する必要はない):人が無意識に触らなければ。汚染された領域を通過した空気が直接当たらなければ。製造区域に置いてはいけない…もし置く場合は…というようなGMP要件がなければ。

このスライドの装置の故障も「マイGMP」の一つです。

「逸脱は手順から外れたものをいう」→「故障は手順ではない」→「ゆえに、故障は逸脱ではない」→「ゆえに、逸脱報告は必要ない(マイGMP)」

故障は手順からの逸脱なんですが、説明してもわかってもらえないことがあります。これは、故障の手順というのがないからかな?「適切な(使用の意図に合った)装置を使用する」「定期的に(予防)保守をする」は手順なんですけどと説明しても、「いえ、違います」と言われたら、それで終わりです。ちなみに、これは実際にあった話です。

「マイGMP」は、誤った前提を正しいと思い込んで論理展開し、導いた結論からGMPを「間違って」解釈することです。しかし、結論を導いた当人は「GMPを正しく解釈した」と思っています。GMPの現場で議論が発生して、両者が引かずに物別れに終わるゆえんです。