FDAのリモート査察(?)の新しいガイダンス
4月に発行されたFDAのリモート査察のガイダンス概要をお知らせします。
その前に、ちょっと背景情報です。
(“..)φ;RIEよりも「リモート査察」の方が皆さんに馴染みがあると思ったので、勝手に言い換えて使っちゃいました。FDAさんごめんなさいm(_ _)m
FDAはリモート査察を一般の査察と比べてあまり評価していませんでした。これは個人的な感想ですが、その姿勢は今も同じだと思います。今回のガイダンスは「Remote Interactive Evaluations」と評して、リモート「査察」と言っていません。査察とは明らかに区別しています。
しかし、会計検査院(GAO)からこのままではルーチンの査察の実施不足によってデッドログが増加して問題になるので、リモートを検討するように勧告されて、今回のガイダンスになったようです。(“..)φ;通常の査察を中断して、ミッションクリティカルへの査察対応をしていますので、昨年度の査察数は半減しております。
さて、ガイダンスの題名はこのようになっています。” ”でくくった文章をコピーアンドペーストでググれば、原文をダウンロードできます。
Guidance for Industry:
“Remote Interactive Evaluations of Drug Manufacturing and Bioresearch Monitoring Facilities During the COVID-19 Public Health Emergency" April. 2021
<ガイダンスの目次>
I. Introduction
II. Background
III. Planning a Remote Interactive Evaluation
A. Selecting and Notifying the Facility
1. Specific Considerations for Pre-Approval and Pre-License Inspections
2. Specific Considerations for Post-Approval Inspections
3. Specific Considerations for Surveillance Inspections
4. Specific Considerations for Follow-Up and Compliance Inspections
5. Specific Considerations for Bioresearch Monitoring Inspections
B. Preparing for a Remote Interactive Evaluation
IV. Conducting a Remote Interactive Evaluation
A. Technological Requirements
B. Remote Interactive Evaluation of Documents and Records
V. Concluding a Remote Interactive Evaluation
VI. Impacts of Remote Interactive Evaluations on Established Commitments and Timeframes.
A. Commitments for Pre-Approval and Pre-License Inspections
B. Timeframes for All Inspection Types
<ガイダンスの概要>
(個人的な知識でまとめたものです。正確には原文をお読みください)
このポリシーは、COVID-19パンデミックの間だけ有効です。FDAは、リモート対話形式の評価(remote interactive evaluation:以下RIEと略す)を求める可能性があります。
トラベルができないミッションで、リモートインタラクティブ評価を行う可能性があります。
FDAはいろいろな目的で査察を行っていますが、それらのプログラムをRIE可能な候補と見なしています。 FDAの方針は以下のとおりですが、限定的ではありません。
- FDAは申請者や施設からのRIEの依頼を受け付けない
- RIEの通知は電子メール(electronic correspondence)か電話で知らせる
- 通知のときに施設側の同意とRIEの参加可能性(電話会議、ライブストリームビデオ、データや文書のスクリーンの共有などを含む)を確認する
- 特定の調査のための査察("specific consideration for surveillance inspections")はPIEを実施しない。しかし、リモートでの情報収集をする。
- フォローアップやコンプライアンス査察の場合、FDAがRIEをするかどうか決定する。これには、その施設の性質や査察履歴やデータインテグリティの問題などを考慮する。
(“..)φ:リスクベースかな。タイミング的には、警告書発行や規制ミーティングの後で、または規制措置の後で、FDAは是正措置が実施されたことを確認するために査察を実施する。 - FARやBiological Product Deviation Reportの場合は、RIEを求めるかもしれない
- BIMO(Bioresearch Monitoring)査察の選定は、リスクベースで実施する。
(“..)φ;どうやらデータインテグリティの問題がありそうな場合は、RIEのチャンスはないでしょうね。
FDAとの打ち合わせの中で、施設のウォークスルーのライブストリーミングに関しても、その期待するところを話し合うようです。施設の就業時間に製造作業のリモート観察をするので、時差の心配することはありません。。
リモート査察に使うシステムや通信能力などもインターネットをつないでチェックします。
RIEの実施は、以下のような概要です。
FDAは通常の査察と同じ透明性のレベルを期待しています。それは、通常の査察と同じスケジュールで適切な回答者がいることと、現場が稼働していることです。RIEのときに、ビデオやその他の対応が施設や是正措置を十分検査できないと判断した場合は、RIEを中断する可能性があります。
RIEで実施する方法は以下のようなものですが、一部と表現していますので、これ以外にもあると思っておくほうが無難です。
- 文書、記録、電子システムなど情報のレビュー
- ライブストリームや録画済みビデオで施設、作業、データの確認
- インタビューや会議で質問や懸念事項を確認
- 施設の是正措置(前回の査察やRIEなどの)を評価
-実際の査察が必要になることもある- - 指摘事項や未解決の問題について口頭で更新
使用するプラットフォームは、
- Microsoft Teams
- ZOOM
- Adobe Connect
FDAは事前に文書やその他の情報をリスエストしてレビューしますが、RIEのときにも文書やビデオ録画をリクエストします。RIE中にリクエストされたものは妥当な期間内に提出する必要があります。このタイミングは、普通の査察と同じと考えましょう。
FDAは、提供される文書が電子形式か画面共有で行われることを期待しています。もちろん英文での提供になります。もし翻訳が必要であれば、翻訳者を施設側で手配しなければなりません。施設側は、パスワードで保護されたファイルにFDAがアクセスできるようにする必要があります。
紙の文書や記録を使っている施設は、FDAがアクセスできるようにしておく必要があります。可能ならPDFにしてください。
RIEの結論は、クローズアウトミーティングで観察事項のリストを書面で示してくれます。このリストは最終的な決定ではなく、またFDA-483でもありません。FDA-483は発行しません。しかし通常の査察と同じように、施設側は米国の15営業日以内に回答書を提出することが期待されています。
RIEの結果は、以下のことに使用されます。
- 保留中の申請に関する評価を支援情報
- フォローアップ査察の必要の取り消し
- 規制ミーティング、警告書、輸入警告、回収活動、または規制措置のサポート情報
- 査察、特にサーベーランスCGMP査察、のための格付けや優先順位付け
- フォローアップまたはコンプライアンス査察、その他の監視活動の正当化
RIE後に、FDAは最終的な報告書のコピーを施設に提供します。これは、FOIAのもとで公開対象となります。FDAが査察が必要であると判断した場合、得られた情報を使用して査察の準備を行い実施します。
FDAの対応は査察と同じ時間枠で行われます。回答や是正措置は、15米国営業日以内に提供された場合、評価されます。 15日営業日以後に受領した場合、検討を延期する可能性があります。