FDA Warning letter(Case # 570944):OTC(アメリカ):品質部門;試験室管理;微生物試験手順;データインテグリティ;好ましくない微生物の試験

FDAのWarning letterが掲載されました。

医薬品GMPに関するFDAのWarning letterを紹介します。今回の対象会社は、アメリカのOTC製造施設です。

業務全体の品質監督が求められる予感がするようなWarning letterでした。このWarning letterは平凡なものですが、文脈からFDAのトレンドがうっすら見えてくるような気がしました。品質監督と品質メトリクスのデータ? また、最近話題になっている微生物試験のデータインテグリティに関する査察官のアプローチが出てきます。

指摘は、1)品質部門; 2)試験室管理; 3)微生物試験手順; 4)データインテグリティ; 5)好ましくない微生物の試験に関する項目です。

WL#: Case # 570944
日付: 2019年6月11日
発行オフィス: DPQOII
対象会社: Deb USA Inc. (アメリカ)
対象品: OTC医薬品(抗菌ハンドソープ、消毒剤など)
査察期間:2018年10月22日~30日
回答受理日:2018年11月20日
GMP違反:5項目
掲載サイト: https://www.fda.gov/inspections-compliance-enforcement-and-criminal-investigations/warning-letters/deb-usa-inc-570944-06112019

<指摘事項の解説>

1.この会社は品質部門の責任と手順を確立して、それに従っていませんでした(21 CFR 211.22(d))。

具体的には、製品の品質試験を完了後に出荷することを保証していませんでした。微生物試験の結果を確認する前に抗菌ハンドソープと手指消毒剤を出荷していました。

また、OOS試験結果をタイムリーに調査していませんでした。ロット出荷の2ヶ月後にOOS分析結果の調査を開始しました。

FDAはこの会社に4項目の回答を求めていますが、その中に業務全体にわたる「品質監督」の規定を定めることがありました。

 

2.科学的な試験手順の確立を含む、適切な試験室管理が出来ていないことが指摘されています(21 CFR 211.160(b))。

HPLCのデータの●を管理する手順がありませんでした。 さらに、同じ数をインジェクションして、最終結果を平均することを求めていませんでした。

具体的には、対象のフォームウォッシュは、初回OOS試験結果でしたが、●で得た合格結果が報告されています。

(..)φ:ここの意味は想像するしかありませんが、FDAはその後の文章で試験手順や試験法が適切ではない場合、医薬品が品質特性を満たすことを保証できないと言っています。試験手順や試験法が悪かったため初回OOSを無効にしたか、追加でインジェクションして平均して合格させたというストーリーではないかと想像します。もしそうなら、データインテグリティの問題の選択的報告か、品質メトリクス(初回OOS無効率)で注目されているデータですね。

 

3.試験室管理機能を確立して守っていませんでした(21 CFR 211.160(a))。

こちらは、試験手順を守らなかったという問題です。観察事項を4例あげています。伏字が多くてわからないものがあります。

  • 生菌数試験の手順を守らなかった。
  • ??異なる培地を使わなければならないのに、同じ培地で試験したのかな??わかりません。
  • 微生物試験の結果を同時に記録していなかった。

(..)φ:FDA査察官のデータインテグリティの問題に対するアプローチが出ています。試験室のゴミ箱(廃棄培地を入れる缶)から平板を取り出し、その受取、調製、培養、計数の記録がないことを確認しています。 記録されていない平板の試験シートは完了しておらず、職員の説明によると後で記憶をたどって記入するとのことでした。自分用に原文を転記しておきます。

“Many microbiological testing activities were not contemporaneously documented. Significantly, our investigators found microbiological test plates in a laboratory trash can with no written record of their receipt, preparation, incubation, or reading. The test sheets for the undocumented plates were not completed and the employee stated he would record the results later from memory.”

  • 試験に使用された乾燥している平板を観察した。

(..)φ:培地の調製日や有効期限が明らかになっているのかは書かれていませんでした。

 

4.完全な試験データを記録していませんでした(21 CFR 211.194(a))。

具体的には、試験の電子データを上書きし、オリジナルの試験記録を破棄して、OOS試験結果を報告していない事例が見つかりました。 観察事項を2例あげています。

  • HPLCのソフトウェアはデータを上書きして、オリジナルのデータが得られなくなります。〔それに関連することで〕施設外の大型ゴミ箱(dumpster)の中から、破かれたクロマトグラムが発見されました。上書き結果は監査証跡に記録されず、合格結果が報告されるようにデータ操作されていました。ちなみに、安定性試験です。
  • OOS結果を報告しませんでした。サンプルを2回インジェクションして平均化すると不合格になるので、合格した1回のインジェクションのみの結果を報告しました。これはデータインテグリティの問題のうち、選択的報告になります。

 

5.必要に応じて、医薬品のバッチごとに好ましくない微生物の試験を実施しませんでした(21 CFR 211.165(b))。

適切な微生物試験を行わずに、医薬品が出荷判定されていました。 例えば、そのように出荷したロット9085は、潜在的な微生物汚染のために回収されています。