FDA Warning letter:API(日本):データインテグリティ

今週は、3件のWarning letterが掲載されました。米国の製剤製造施設が2通、日本のAPI製造施設が1通です。

原則として日本の企業のWarning letterは本ブログで紹介しませんが、「データインテグリティ」に関して皆さんの誤解を解消し、注意を喚起するために、紹介させていただきます。

Warning letterを受理した会社には申し訳ありません。お許しください。回顧的レビューは日本が苦手な領域です。しかし、製品を海外に輸出する会社は、FDA-483 の回答のセオリーを知って、取り組んでいただきたいと思います。

EMA査察では、FDAのようなステップを踏まずに、ダイレクトに結果がでますので、そちらも注意して下さい。万全の事前準備が望まれる所以です。

それでは、医薬品GMPに関するFDAのWarning letterを紹介します。今回の対象会社は、日本のAPI製造施設です。

指摘は、1)データインテグリティに関する1項目です。


WL#: 320-18-63
日付: 2018年7月17日
発行オフィス: CDER

対象品: API
査察期間:2017年11月13日~17日
回答受理日:2017年12月8日
GMP違反:1項目


 

<指摘事項の解説>

1. APIが規格に適合していることを保証するために実施された、試験のデータを完全に維持していなかった。

この会社は、APIの試験データを正式なバッチ記録に含めて、品質部門がレビューすることを保証していませんでした。たとえば、2015年7月28日の○の開始に分析したロット関連物質の合格を報告しています。しかし、同日の同じロットで、その前に取得した未報告のOOS結果を査察官が見つけていました。その結果は、翌日、報告された結果として見つかりました。この会社は、当該ロットの出荷前に、品質部門によってレビューされるべきこのデータを含めていませんでした。

この会社の回答では、サンプル溶液を使ってHPLCカラムの条件を「トライアル分析」したと説明しました。しかし、その説明では、なぜ標準液を使用して「トライアル分析」をしなかったことには触れていません。または、USP<621>に記載されているシステム適合性に加えて、なぜこのような余分の分析をしたのかに触れていませんでした。

また、査察後に行われた回顧的レビューでは、オリジナルのバッチ記録で未報告の電子データがあることも認めました。この会社は、試験室のデータのみをレビューして、CGMP情報が生成・維持される施設の作業すべてを評価していませんでした。さらに、レビューの基準や方法の詳細を示していませんでした。

(..)φ;製造工程の装置にもコンピュータ化されたものがあります。その装置から生成されるデータの保持や報告などについて評価していなかったのでしょう。査察では、データインテグリティは試験室のデータが焦点になります。しかし、データインテグリティの対象は、GMP活動で生成される全てのデータです。電子データだけでなく、紙のデータも対象です。試験室だけでなく、製造、包装、表示、保管、全てが対象ですので、注意しましょう。