FDA Warning letter(320-18-51):API(中国):逸脱とOOSの調査;データインテグリティ;GdocP

医薬品GMPに関するFDAのWarning letterを紹介します。今回の対象会社は、中国のAPI製造施設です。

指摘は、1)逸脱とOOSの調査; 2)データインテグリティ; 3)GdocPに関する項目です。

 


WL#: 320-18-51
日付: 2018年5月14日
発行オフィス: CDER
対象会社: Jilin Shulan Synthetic Pharmaceutical Co., Ltd.(中国)
対象品: API
査察期間:2017年11月7日~10日
回答受理日:2017年11月27日付
GMP違反:3項目
掲載サイト: https://www.fda.gov/ICECI/EnforcementActions/WarningLetters/ucm608713.htm


 

<指摘事項の解説>

1.この会社は既知の逸脱およびOOSの結果を記録せず、徹底的な調査を実施しませんでした。

<記載されていない製造の逸脱>

査察中に、「製造手順の違反(逸脱)と作業員に50元の罰金を科した」ことをメモ書きしたバッチ記録が発見されました。もちろん、逸脱報告書は出されていません。

この会社の回答書には、この作業員の手順違反の理由が書かれていなかったため、不十分であると判定されました。

<2重の試験記録と未調査のOOS結果>

査察中に、そのバッチに対して2セットの試験記録があるものを発見しました。これは、ある製品の4バッチと他の製品の5バッチで発見されています。この2セットのうち1セットはOOSの結果があり、もう1セットは規格内の結果でした。もちろん、OOS結果の調査はされていません。

(..)φ;監査の典型的なアプローチは「複数のバッチ記録を調査する」ことが、この記述から学べますね。個人的な意見ですが、トレンドやパターンをチェックするには過去3年ぐらい必要かもしれません。すべてを見る必要はないでしょう。訂正箇所や注記メモを重点的に見ていきましょう。これはデータインテグリティに関する切り口です。一変や軽微変更届に関する切り口なら、パラメータや規格の範囲などを見比べるとよいでしょう。

 

2.この会社は、データへの未許可のアクセスと変更を防ぐためのコンピュータシステムの適切な管理をしていませんでした。また、データの漏れを防ぐ適切な管理も実施していませんでした。

査察官は、スタンドアローンのHPLCシステム、GCシステム、IRシステムを調査しました。これらの装置は、監査証跡が有効ではありませんでした。(..)φ;クロマトグラフィーのシステムは監査証跡機能がついていないバージョンのものです。

それを補完するような機能、すなわちデータの変更の記録や監視機能もありませんでした。これらの装置の電子データは、ポータブルのドライブにバックアップされていました。このドライブは、パスワードで保護されておらず、鍵がかからない引き出しに保管されていました。

また、HPLCに接続されているコンピュータのゴミ箱から、システム適合性試験のファイルが見つかっています。

この会社は、監査証跡機能を持ったソフトウェアにバージョンアップをすると回答しましたが、データへのアクセスや変更の防止についてどのように証明するかを示していなかったため、回答不十分と判定されました。

 

3.この会社は、作業の実施時点で記録していませんでした。

査察時に多くの事例が見つかっています。例えば、

・作業者が事前に署名したブランクのバッチ記録;

・部分的に完了されたバッチ記録; 

(..)φ;部分的に記述されているバッチ記録のこと?原文は”partially-completed batch records”

・正当化なしに鉛筆で変更されたデータがあるバッチ記録です。