査察妨害に関するドラフトガイダンス(2013)の個人的なまとめ

FDAの査察妨害に関するドラフトガイダンスが出た時に、個人的に内容をまとめてシリーズでこのブログに載せました。2013年の7月のことなので、もう3年前になります。目を通されていない方のために、個人的にまとめたものをもう一度掲載することにしました。今回は一括掲載です。FDA査察前の「Do & Don’tのトレーニング」にお役立ていただければ幸いです。ちなみに、ガイダンスの最終版は2014年に発行されています(正式には、そちらを参照ください)。

ドラフトガイダンス

Circumstances that Constitute Delaying, Denying, Limiting, or Refusing a Drug Inspection

July 12 2013 

(“..)φ:査察では、こちらに意図はなくても、査察官が査察を妨害されたと感じるかもしれない。そのような言動や行為を極力抑えるために、この文書は役立つと思われる。Do & Don’tのトレーニングに追加してもらいたい。

 

(“..)φ:しかしながらドラフトです。ドラフトはドラフトとして扱い、最終版が出たら必ず更新しましょう。ドラフトは変わるというのが業界の常識です。

 

本文書は、以下のサイトからダウンロードできます。

 

ドラフトガイダンス:http://www.fda.gov/downloads/RegulatoryInformation/Guidances/UCM360484.pdf

 

Federal Register(連邦官報):http://www.gpo.gov/fdsys/pkg/FR-2013-07-15/pdf/2013-16841.pdf

 

(“..)φ1:主題をどう訳そうか考えた末、「FDA査察の妨害行為に関するドラフトガイダンス」とした。内容は、査察官に対して査察行為をわざと遅らせたり、リクエストを拒否したり、査察行為を制限したり、禁止するなどの行為を、「GMPを遵守していない」と判断する目安を示している。

 

(“..)φ2:文中では上記の行為(Delaying, Denying, Limiting, or Refusing a Drug Inspection) を「査察妨害行為」と一括表現する。

 

まずは官報の記述から、要旨を抽出

  • このガイダンスは、事例をあげて査察妨害行為とみなされる状況を定義した。
  • このドラフトガイダンスのコメント〆切は、2013年9月13日。
  • 2012年7月9日にActに501(j)を追加して、医薬品を不適(adulterated)と判断する定義を次のように示した。「『工場、倉庫、または施設で製造、加工、包装、保管されたもので、その工場、倉庫、施設の所有者、作業者、代理人が査察を遅延、否定、または制限するか、入場または査察の許可を拒否した』医薬品は不適とされる」- (“..)φ;平たく言うと、査察を妨害したらその医薬品は不適医薬品(Adulterated drug)と定義しますよということだ。
  • これを受けてFDAは、このガイダンスでFDAが考える査察妨害行為の活動、非活動(怠慢)、状況を定義した。
  • このガイダンスが最終版になれば、査察妨害行為に関するFDAの現在の方針を表すものとなる。

 

1. はじめに

  • 次の行為は医薬品の不適と考える。(“..)φ;英文で正確に理解したい- Section 707 of FDASIA adds 501(j) to the Food, 17 Drug, and Cosmetic Act (FD&C Act) to deem adulterated a drug that “has been manufactured, 18 processed, packed, or held in any factory, warehouse, or establishment and the owner, operator, 19 or agent of such factory, warehouse, or establishment delays, denies, or limits an inspection, or 20 refuses to permit entry or inspection.”
  • このガイダンスは次のことを定義している。(“..)φ;英文で正確に理解したい-This draft 24 guidance defines the types of actions, inaction, and circumstances that the FDA considers to 25 constitute delaying, denying, or limiting inspection, or refusing to permit entry or inspection for 26 the purposes of section 501(j).
  • このガイダンスは、FDAが遭遇する代表的な状況を示したもので、査察妨害行為の完全なリストではない。
  • この4用語(delay, deny, limit, refuse)は必ずしも互いに排他的とは考えていない。(“..)φ;mutually exclusiveはダブらずにすみ分けていることなので、文意はこの行為がオーバーラップすることもあるとFDAは解釈している。そのため、文中の例は一つ以上の行為に当たるかもしれない。
  • 本文中の「施設:facility」という用語は、施設内の建物、製造所、倉庫(establishments, factories, and warehouses)などすべてを含んでいる。

 

2. 背景

パラグラフ1(42~52)

  • FDA査察は、施設がFDAの施行する法規を遵守していることを評価する行為である。
  • FDAは査察の前に、または査察の代わりに、妥当な時間枠で、妥当な制限のもとで、妥当な方法で、記録や情報をリクエストすることを法で許されている。

パラグラフ2(54~60)

  • 入場や査察の拒否、記録の閲覧やコピーの拒否は、その責任者に対して刑罰が科せられる違法行為である。
  • 新たに追加されたセクション501(j)は、そのような医薬品を不適合品(adulterated)とみなす。

 

3. 査察を遅らせる行為(Delay of Inspections)

パラグラフ(64~66)

  • 遅延は多くの理由によって発生する。なかには、施設が管理不能((“..)φ;施設の意図した操作によるものではない)なものもある。
  • しかし、所有者、作業者、代理人が査察を遅らせた場合は、法のセクション501(j)のもとで医薬品は不適合とされる。

 

A.  事前通知された査察のスケジュールを遅らせた場合(Delay Scheduling Pre-announced Inspections)

パラグラフ1(69~73)

  • 法は求めていないが、FDAは施設のマネジメントに前もってコンタクトし、査察の事前通知をするかもしれない。
  • この事前通知は、査察プロセスを円滑に運び、適切な記録や回答者を用意することが目的である。
  • 普通、医薬品の査察(承認前、許可前)と外国施設の査察の多くは、査察官が訪問する前にスケジュールが組まれている。

 

パラグラフ2(75~88)

  • 海外施設の場合には合衆国の代理人も含め、施設のマネジメントに書簡をおくるなど、FDAは査察の事前通知を計画するように努めている。
  • FDAのゴールは、提案した査察開始日以前の妥当な時期に、施設にコンタクトすることである。
  • FDAは、天候、安全保護の状況、休日、非就労日、キャンペーン製造の予定など、その場所の条件に対応しようとしている。
  • たとえば医薬品が不適合とみなされるような、査察の事前通知スケジュールを遅らせる例は、次のようなものであるが、これだけとは限らない:
    • 施設が提案した査察開始日に同意せず、且つそれができない合理的な説明をしない場合。
    • 査察のスケジュールを立てたあとで、施設が合理的な説明をせずに開始日を遅らせるリクエストをした場合。
    • FDAがコンタクトしようとする施設の指定された窓口担当者を、施設が応えない場合。

 

B. 査察中に遅延化を図った場合(Delay During an Inspection)

パラグラフ(92~109)<一部略>

  • 医薬品施設内では、FDAは医薬品の不適合、不正表示や法の違反などを査察する幅広い権限を有する。
  • 査察開始の前または後で、FDA査察官が施設内で妥当な方法で査察することを妨害するような施設の所有者、作業者または代理人の行為は、査察の遅延化行為とみなす。
  • それは、はじめのうち施設の従業員に些細な混乱や不便をきたすようなことが、現場で見られることをFDAは知っている。
  • 施設がFDAのリクエストに誠実に応えようと努めた結果乗じるマイナーな遅延は、一般的に合理的ではないとみなされない。(“..)φ;二重否定だジェ(FDAは真面目に対応した結果遅れるのはしょうがないと認めている)。
  • 事例は次のようなものであるが、これだけとは限らない:
    • たとえその区域が作業中であっても、FDAが査察権限を有する区域であれば、FDA査察官が施設のある区域に立ち入ることを、施設が特定の日または時間まで許可しない場合。
    • 施設が、遂行可能な査察を妨害するような不当な時間、必要な文書や対応者なしで、FDA査察官を会議室に置き去りにした場合。

 

C. 記録の提示の遅延化を図った場合(Delay Producing Records)

パラグラフ(92~109)

  • 査察の準備と施設の査察で重要なことは、医薬品が不適合、不正表示、法に違反しているかを示す、紙のコピーと電子記録、ファイル、書面のレビューと収集である。
  • 例えば、逸脱、州間取引、製品の表示と宣伝の証拠文書を集めるために、そしてさまざまな活動の責任団体を特定するために、記録が必要である。
  • リクエストされた記録、特に他の場所に保管されている記録を提示するために、施設が妥当な時間を必要とすることをFDAは認めているが、合理的な説明なしにFDAへの記録の提示が遅れることは、査察の遅延化を図ったとみなされる。
  • 事例は次のようなものであるが、これだけとは限らない:
    • 査察中にFDAが有する特定の妥当な時間枠内で調査する権限で、FDA査察官が記録をリクエストしたが、施設が適切な正当化をせずに、FDAがリクエストした時間内に記録を提示しなかった場合。
    • FDAが法のセクション704(a)(4)に従って記録をリクエストしたが、施設が適切な正当化をせずに、適宜記録を提示しなかった場合。

 

4. 査察の拒絶(DENIAL OF INSPECTION)

パラグラフ(133~146)

  • FDAは”deny”という言葉を、医薬品施設の所有者、作業者、代理人がFDAの代表者が査察を実施または完了させる権限を妨げる実際の行為を含むと解釈している。
  • これは、査察の回避や査察官を誤らせたり欺くことを意図した、言動や行動を含む。
  • 事例は次のようなものであるが、これだけとは限らない:
    • 施設が、FDAが査察のスケジュールを立てようとすることを拒否する場合。
    • 事前にスケジュールされていても、施設がFDA査察官の査察開始を認めない場合。
    • 職員が不在であることを理由に、FDA査察官の査察を認めない場合。
    • 施設が医薬品を製造していないと偽って、FDA査察官の査察を認めない場合。

 

5. 査察の制限(LIMITING OF INSPECTION)

パラグラフ(150~154)

  • FDAの代表者が法で認めている査察の実施を防止する医薬品施設の所有者、作業者、代理人は、セクション501(j)の下で査察を制限したとみなされる。
  • 事例は次のようなものであるが、これだけとは限らない:

 

A. 施設や製造工程への入場の制限(Limiting Access to Facilities and/or Manufacturing Processes)

パラグラフ(159~173)

  • FDAの権限を有する代表者((“..)φ;以下FDA査察官という)が、法のもとで査察をする権利がある場所への正当な立ち入りを防止することは、査察の制限とみなされる。
  • これは、製造工程の開示拒否や観察阻止を含む。
  • 事例は次のようなものであるが、これだけとは限らない:
    • 施設が、FDA査察中に合理的な説明をせずに、全ての製造の中断を命じた場合。
    • 施設が、全てまたは一部の製造工程を直接観察することは、(FDAの慣習的な査察を妨げるほど不当な)短時間に制限されていると述べた場合。((“..)φ;超短時間しか見せないよと言った場合)
    • 施設が、製造工程の一部を直接観察することを制限した場合。
    • 施設が、適切な正当化なしに、特定の施設への入場を不当に禁止した場合。
    • 施設の職員が、査察が完了する前にFDA査察官を工場から立ち去らせるようなことをした場合。

 

B. 写真撮影の制限(Limiting Photography)

パラグラフ(177~183)

  • 写真は施設の状態を正確な描写として伝えるものなので、FDA査察を構成する欠くことのできない一部である。
  • 査察を効果的に実施するために写真が必要であると査察官が決定した場合、FDA査察官の写真撮影を認めないことは制限とみなされる。
  • 写真によって状態や実践が効果的に記録された事例は、次のようなものがあるが、これだけとは限らない:
    • 齧歯類や昆虫の侵入の証拠;
    • 装置や施設の建設または保全の欠陥;
    • 製品の保管条件;
    • 製品のラベルや他の表示物;
    • 原料や製品の目視可能な汚染。

 

C.  記録の閲覧やコピーの制限(Limiting Access to or Copying of Records)

パラグラフ(187~200)

  • セクション3-Cで説明した通り、記録の閲覧とコピーはFDA査察の重要な一面である。
  • FDA査察官の記録の閲覧やコピーを認めないことは、リクエストした記録を提示しないことも含めて、査察の制限とみなされる可能性がある。
  • 記録の制限の事例は次のようなものであるが、これだけとは限らない:
    • 施設が、FDA査察官が施設の出荷配送記録をレビューすることを拒否した場合。
    • 施設が、FDA査察官のリクエストした記録の全てではなく、その一部を提示した場合。
    • 施設が、FDA査察官のリクエストした記録を提示したが、それが不当に編集された記録だった場合。
    • 施設が、FDA査察官のリクエストした記録の提示を拒否するか、それが不当に編集された記録だった場合。

               

                (“..)φ:常に”Honest is the best policy”ですね。

 

D. サンプルの収集の制限または阻止(Limiting or Preventing Collection of Samples)

パラグラフ(204~210)

  • サンプル収集は、FDAの査察と規制の行為にとって、重要な部分である。
  • 法のセクション702(a)でその権限を規定している。
  • FDA査察官のサンプル収集を阻止することは、査察の制限とみなされる。
  • サンプルの制限の事例は、これだけに限定しないが、次のようなサンプルである:
    • 環境サンプル;
    • 最終製品のサンプル;
    • 原料のサンプル;
    • 中間製品のサンプル;
    • 参考品(reserve samples)(生物学的同等性と生物学的分析調査の)

 

5. 入場や査察の拒否(REFUSAL TO PERMIT ENTRY OR INSPECTION)

パラグラフ(214~228)

  • 「入場や査察の拒否」の用語は、施設の所有者、作業者、代理人の受身の姿勢や行動しないことで、結果として査察官が施設に入場できなかったり、査察できないことを含むとFDAは解釈する。
  • このガイダンスの目的は、そのような所有者、作業者、代理人が製造所、倉庫、または他の施設の査察を認める対策を講じなければ、入場や査察を拒否したとみなされる。((“..)φ;ここだけ”shall”表現なので、強調されている)
  • 事例は次のようなものであるが、これだけとは限らない:
    • 施設が、たとえば査察官が入場できるように区域の解錠やその他の必要な行動をとらないなど、FDA査察官の施設または施設のある区域への入場を妨げた場合。
    • 窓口担当者とのコンタクトしたいFDAの希望を受けても、施設がその対応をしない場合。
    • 施設が、仕事に関連する機能に係る従業員が居る明らかな証拠があるにも関わらず、施設にいるFDA査察官の求めに応じない場合。