GMPを勉強しよう-5-クロスチェックは監査の基本

最近読んだECAのGMPニュースに、こんな記事が載っていた。

The GMP deviations detected during inspections with regard to electronic data are so elementary that the FDA urgently recommends to the companies concerned to occasionally get a Third Party Auditor who would first perform an in-depth GMP audit and then support the company remove the deficits with respect to data integrity. The consultants should be experts in this area.

要約すると、FDAは電子データに関する調査で欠陥が見つかると、第三者(FDAはコンサルタント言っている)の徹底した監査をして、その上で会社のデータインテグリティの欠陥を取り除くようにWarning letterの中で提案している。そのコンサルタントは、この分野(データインテグリティ)の専門家でなければならない。

その後に続く文章の中で、この専門家が行うのは欠陥の検出で、いわば探偵(detective work)の様な仕事だと言っている。このように人を疑うような姿勢は、日本の文化では「性悪説」という言葉が使われて、嫌われる傾向にある。右からの切り口だ。

一方、この文章の中では「この探偵のような仕事は、患者の安全という利益のために不可欠である」と述べている。左からの切り口だ。

どちらの見方にしろ、結果として欠陥製品が市場に出て、患者が服用するようなことは避けなければならない。そのための監査である。

この記事は、最近のインドのカントリーリスクに焦点を当てている。データの信頼性は(その他の記録の信頼性も同様だが)、その記述だけを見てもわからない。関連するデータや事象を見て、そこに整合性があるかを判断する。いわゆるクロスチェックという手法を用いる。

監査は、このような記録の意味するところをあぶり出す(これが性悪説的な表現なら、浮き彫りにする)ような「テクニカルレビュー(技術的レビュー)」でなければならない。単に事務的に必要な情報が記述されていることを確認するだけの「クレリカルレビュー(庶務的レビュー)」では、専門家の監査とは言えないわけだ。

昨年、あるコンサルタント(外人)から、こんな話を聞いた。第三者監査でインドにも行くそうだ。監査中の事である。「マテリアルの製造には全て精製水を使用しているとのことだった。ところが、精製水システムはそのような能力を持っていなかった。」これがクロスチェックだ。

このコンサルタントは、精製水システムの能力を、貯水タンクの大きさ(レベルコントロールの範囲)、精製装置やろ過器の能力(流量)、ループの長さや太さ、製造区域の水の需要(量と時間)など、多方面から見積もったことだろう。

我が家の監査員

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

我が家の監査員たち(コンピュータの前で仕事の出来を見守っている)