日付のスタンプの使用について

以前「日付のスタンプを使ってはいけないのか」という質問を受けたことがあります。個人的には「使わないほうがよい」と考えますが、日付のスタンプを禁止したGMP文書は見当たりません。

PIC/S GMPのデータインテグリティに関するガイダンスには、日付は印鑑の所有者が記入することと書かれています。この部分を正確に解釈するために原文を抜粋しますと"Use of personal seals should be dated (by the owner), to be deemed acceptable."と書かれています。

ところで印鑑についての記述は、身近なところではICHQ7(PIC/S GMP PartII)に"personal seal"として出てくるだけです。これは、「ハンコを使ってもよいですよ」というサインだと思いますが、"personal seal"ですから日付のスタンプについては語っていません。

「でも、こんなのあるでしょ。ほら、名前と日付が入ったハンコですよ」と疑問がわいてきます。「このハンコの日付をアジャストするのは、印鑑の所有者ですから。"dated"って手書きじゃなくてもいいでしょ」みたいな無駄な議論に発展していきそうですね。確かに"hand written"とは書いていません。

注:GMPの解釈で、議論がこのような流れになったら要注意です。多くの場合、最終的には「マイGMP」(論理的な結論を導いたように思いこんでしまう自分勝手なGMPの誤った解釈)になることが多いです。GMPの解釈の基本は、管轄当局が何を期待しているかに立脚することです。

さて、原文をスーパー素直に読みましょう。それができない場合は、もう少し文脈を見ていくとよいでしょう。念のため、その前の文章も入れておきます。

“・ The use of personal seals is generally not encouraged; however, where used, seals should be controlled for access. There should be a log which clearly shows traceability between an individual and their personal seal."

これは、先に紹介した原文の直前の文章です。キーワードは「個人と印鑑のトレーサビリティ」です。アジャストされた日付のトレーサビリティをとるために、皆さんはどうしますか?普通、印鑑を登録しておきます。今日の日付の印鑑を登録することになります。そして明日になったら、明日の日付の印鑑を登録することになります。そして、使用したら印鑑の使用ログを記入することになります。または、「アジャストした人は署名と日付を記入してください」という笑えない要件が発生します。

この問題は、これぐらいにしましょう。

でも、もう1つ疑問が湧いてきたかもしれませんね。「印鑑を使わない場合は、日付のスタンプでもいいのか?」

スタンプを押した人と日付のスタンプのトレーサビリティが取れればいいんじゃないですか。日付のスタンプを施錠管理して、貸出ログを作成して、使用者はここに押したと申告するのかな。

そして、日付のスタンプの押し間違いがないように、ここはダブルチェックにしておきましょうか!いわゆる入出力チェックですね。PIC/S GMPでは、"witness"もう一人その場にいてチェックする。その時の日付はスタンプではだめなんですか…笑えない話です。

そこで、スーパー素直に当局が何に期待しているか考えて判断しましょう。