GMPを勉強しよう(深堀りGMP 16)第15条逸脱の管理:フローチャート

肉付けはまだ足りないですが、一旦ここでやめておきます。ここから先の肉付けは、手順を構築するための「ハウツー(how to)」です。GMPの解釈から外れていきますので、ここでストップです。

まだ肉付けしていない「原因究明」と「CAPA」は、それぞれの解釈として別の機会に話題として取り上げたいと思います。

次に触れたいのは、逸脱処理のフローです。前に「GMP省令改正案のポイント」に載っていたフローチャートを紹介しました(深堀りGMP14)。フローチャートと言うよりは、スキームと言ったほうがよいかな。これは第15条の要件を枠で囲って、全体像をわかりやすく伝えています。

これをフローチャートとして手順書の中に入れてしまうと、少しだけ問題が起きるかもしれないので注意してください。これはやはりスキームというべき図式ですね。

どんな問題かと言うと、流れの順序と時間の問題です。

ここでシミュレーションしてみましょう。

問題が発生しました。これは瞬間的に逸脱だと分かりましたので、大急ぎで逸脱管理責任者に連絡しました。もちろんその場で発見日時、場所、簡単な状況、責任者に連絡したことをロット製造記録に記入して、私の署名を入れました。

間もなく逸脱責任者がやってきました。彼(彼女でもいいです)は「これは逸脱ですね」と言って、所定の記録用紙にその事実を記入しました。そして、私に状況を聞いて、何かチェックリストのようなものを取り出し、「逸脱の影響調査ですよ」と話してくれました。

「大きな影響がなければ、私はそのまま報告書を書いてQAに報告します。しかし、これが重大な逸脱なら、原因究明をして、製販に連絡して、原因に対応したCAPAを実施して、その報告書を書いてQAに報告しなければなりません」と彼は教えてくれたんです。
「手順書に載っているこのフローのとおりに実行していくわけですよ」と、彼はフローを見せてくれました。

その時、私はちょっと変だなと思ったんです。

「重大な逸脱はQAに報告するのが遅れるんですね」と私が言うと、彼は軽く微笑んで「そうですね」と言ったんです。

そして、こんなことを耳元でささやきました。「CAPAは最後までやるとね、モニタリングして効果を評価しなければならないので、クローズするのは来年になるかな。」

こんな感じのシナリオでいかがでしょうか。

重大な逸脱の連絡が、重大ではない逸脱の連絡よりも遥かに遅くなるというのは、私たちの常識では受け入れられないですね。だから、この図式はスキームだということが分かります。

手順書にフローチャートを入れるときは、このスキームを参考にして、実際の業務の流れや時間のファクターを加味して、作図する必要があります。私の経験では、逸脱管理責任者がQA所属とそうでない場合の2つのフローチャートができます。前者のほうが後者より簡単なフローになりますが、どちらも矢印は多方面に向かうことになります。

皆さんもゲーム気分でフローチャートを書いてみれはいかがでしょうか。